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酒は呑んでも呑まれるな!
『かんぱーい!』
カンッとグラスの音が響き、ざわざわと場が騒ぎだす。最初にきたサラダをつつきながらビールを一口飲む。うまい
グラスの中身が半分ほど減ったところで声を掛けられた。
「飲んでる〜?」
ニコニコしながらこちらに移動してきた同僚を見ると、すでに顔が赤い。笑いながら頷き、彼女のグラスを見ればまだ半分も減っていない。そういえば弱かったな、と思い出した。ちなみに私はお酒は大好きだ。
今日は仲の良い同僚たちで仕事帰りに飲みに来ているのだ。
同じ職場の者が集まれば自然と話の内容も決まってくる。あの先輩は横暴だ、上司の頭は絶対にヅラだ。など、仕事で溜まったストレスを存分に発散するのだ。
一通り話し終えると、やはりこれもお決まりで彼氏の話や、好きな人の話になる。
こうなれば彼氏もいない、好きな人もいない私は自然と聞き役に徹する。はずだった…
「で?」「え?」
何か揚げ物的なものが食べたい、と周りに耳を傾けながらメニュー表を見ていると何故か私に視線が集まっていた。
え?じゃないわよ、とメニューを奪われる。
「あんたはどうなのよ」
ん?と聞き返せば、眉間にシワを寄せられた。怖い…
「だから、あんたの彼氏の話よ」
「いや、だから彼氏じゃないってば」
またか、と若干うんざりしていると、じゃあ何なのよ!とグラスを机に叩きつける同僚。酔っ払いめ…
「だーかーらー友達だってば。いや、友達も何か嫌だな、悪友?知り合い…?」
と、ぶつぶつ言っていると
「あれだけご飯に行っといて何もないなんて言わせないわ!」
私もあんなイケメンにご飯誘われたいー!と、顔をうつ伏せてわんわん言ってる同僚を適当にあしらい、メニュー表に手を伸ばした。
ビールと串カツを頼み、考える。
そうだ、あの男、見た目はいいのだ。しかも私と出掛けるときは髪は下ろしているし、スッピンだし、ピエロの服じゃないし、本当に別人だ。まさかあの変態ピエロとは誰も気が付かないだろう。あ、串カツきた。
串カツを黙々と食べていると
「で?実際のところはどうなのよ」
別の同僚に聞かれた。その向こうで、まだわんわん言ってる声が聞こえる。
それにため息で返してビールを一口。横目で見れば笑顔でこちらを向いている同僚。完全に面白がっている。
どうやってかわそう、考えていると携帯が振動した。
電話だったのでよし、逃げれると嬉々として相手を確認するとヒソカの文字。一瞬固まり、閉じた。まだ鳴り続ける携帯に、出ないの?と言われる。携帯を持ったまま黙っていると、何か勘づいたのかさらに笑顔になる同僚。気付かれた。
「出れば?」
「出ない」
出なさいよ。やだ。出ろ。断る。と繰り返していると鳴りやむ携帯。
助かった。さっとカバンに携帯をしまい、マナーモードにした。
「今日は見逃してあげる」
「……」
それから暫くして、明日も仕事ということで今日はお開きになった。
会計を済ませ外に出る。皆タクシーを捕まえ同じ方向の人たちとで帰っていくが、私は1人だけ方向が違う。反対の通りの方が捕まえやすいだろうと皆に別れを告げ歩きだす。
今日は疲れた、色々と。ヒソカのせいで。まだ飲み足りないし…あの変態ピエロめ、と愚痴っていると
そういえばヒソカから電話がかかってたんだと思い出し、かけなおす。
「もしも〜し、何か用?」
「今家かい」
「いや、外」
今から帰るところ、と伝えると場所を聞かれたので現在地を教える。すると、迎えに行くよと言われ一方的に電話が切れた。あの野郎め
それから10分後にヒソカの車が到着し、乗り込む。
「どうしたのよ、言っておくけど今日はご飯は作らないわよ」
「違うよ」
それもいいけどもっといいものさ、と車を走らせる。
何だかいつもより機嫌が良いこの男を不思議に思いながら、外の景色を見ていた。
どこに連れていかれるのかと思えば、そこは私の家で、やっぱりご飯?とヒソカを見れば後部座席から荷物を取りだしている。
いいからいいから、と私の背を押して家へと入っていく。
家へ入り、早速くつろぐヒソカにいい加減教えろ、と言えば一本のビンを袋から取りだしテーブルの上に置いた。
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