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short novel
ミルクチョコ
甘くとろけるチョコレート

わたしはあなたの香りに

酔い痴れる










また同じ季節が訪れた。これで私は17回目の誕生日を迎えるわけです。
2月14日・・・
私の誕生日は女の子たちがそわそわするバレンタインデーなのです。
そんな可愛らしい日に生まれたにも関わらず、私はこれまでに彼氏がいた経験はなかったし、恋らしい恋だってしたことがなかった。
そう。これは今までの私・・・今の私は・・・





「白石、今日もおまえは早いなぁ〜」
「はい!小山先輩に負けないように!!」

私が話しているのは一個年上の2年C組小山紀之先輩。さらさらの黒い髪に合う黒いふちの眼鏡をかけていて、その目は細く、優しさがあふれている。
 私は生徒会の書記で小山先輩は会長を難なくこなしている。

「先輩はほんとに真面目ですよね!関心A〜」
「ま、俺は会長だしな!それより、おまえこそ真面目じゃないか。学年五位だろ?」
「先輩は三位じゃないですか!私はやっぱり先輩にはかなわないんです・・・」「あはは!まぁ頑張れ!おまえだって十分すごいんだからさ!!」
そういいながら先輩は私の頭をぽんぽんと叩いた。「あ、そういや白石の誕生日って2月だったよなぁ?」
「そうですよ!2月14日です!!」
私がそう言った途端、先輩が哀れそうにこちらを見た。
「それ最悪だな。女子が張り切ってる中自分の誕生日迎えるのか。チョコあげる相手もいないんだろう?」普段は優しい目も今では面白げに細めていて腹が立つ。
「別にいいんです!お父さんとおじいちゃんにあげますから!!あとは自分で食べちゃいますし。」
「え〜そりゃもったいないよ!なら俺にくれよ。」
・・・何を言ってるんだ、この人。なんであげなきゃいけないのよ。てか先輩キャラが変わってる!!入った当初は素直できっちりしてて嫌味の一つだって言わなかったのに・・・そんな先輩に憧れてたのに・・はぁ・・・。
「あげませんよ!それに先輩もてるんですからいいじゃないですか!・・・先輩は私の敵です!!」
一度キッと先輩を睨んでから、私はプリントへと目を落とした。
「・・俺は別にたくさん欲しいわけじゃない・・・」生徒会室は狭いため先輩の呟きは私の耳にも届いた。「俺は白石のチョコだけもらえれば「あ〜会長遅れてすんません、勘弁して〜!」
小山先輩のことばは副会長の小熊先輩によってかき消されてしまった。

何が言いたいのかわからない先輩を、私はただただ眺めていた。








2月14日。
ついにこの日がきてしまったわけで・・・私のカバンの中にはちゃっかりチョコが入っていたりして。
(で、でも友達にあげる分だし、余ったらあげてやっても良いかなぁ〜って程度だし!うん!!)
教室に入ったら友達が誕生日を祝ってくれて、チョコとプレゼントをくれた。私はお礼を言い、自分の作ったチョコを友達に渡した。
「ん〜!美味しい〜!!あんた好きな人とかいないわけ!?こんなに美味しいのにあげる相手いないとかもったいないよ〜」
友達のことばに曖昧な返事を返しながら、私の頭の中では小山先輩の顔がなぜだか浮かんでいた。






放課後になり、いつものように生徒会室へと足を運ぶ私に聞き覚えのある声が聞こえてきた。

「なんでですか!?私頑張って作ったんです!!小山くんのことが大好きで、一生懸命作ったのに・・・なんで受け取ってくれないんですか!?」
ちらっと部屋の中を覗いてみると、女の先輩が涙をぽろぽろ流しながらチョコを胸に抱えている。
「好きでもない人のチョコは受け取れない。」
先輩は一歩も譲らずらない。あんなに優しい先輩が・・・なんで?
「・・・!」
女の先輩は耐えきれなくなったようで、小山先輩の前から去り、私の横をすごいスピードで通っていった。 なぜだかその場から動けなくなってしまった私は今の光景を自分に重ねてみた。私も同じようにあしらわれるのかなぁ。先輩のことばを真に受けた私が馬鹿だったんだ。うん、そうだ!別に何も気にすることないじゃない!私はまだあげてないわけだし、今この場で余ったチョコを食べちゃえばいいのよね!
青いリボンを解き、口の中へと放り込む。舌の上で溶けたチョコからは少し苦みのきいた甘さが広がった。 空っぽになった袋とリボンをカバンにしまい、ほっぺを軽く叩いて気持ちを入れ替える。

「あ〜先輩に先越された〜とりあえずこんにちわ!」いつもより少しテンションを高くして憎まれ口を叩く私に、先輩はすっと片手を突き出してきた。
「・・・なんですか?この手。」
「・・・チョコ。」
目線を下にずらしながらぼそっと呟いた先輩はいつもより幼く見えた。
「・・・ありませんよ?」



「・・・へ?」




「だって先輩、好きな人がいるのでしょ?その人のチョコしか貰わないって言ってたじゃないですか。」


「・・・みてたのか?」



あ、やばい。墓穴ほっちゃったよ・・・。




「わ、わざとじゃないです!!入ろうと思ったら聞こえちゃって!だ、だからチョコは自分で食べちゃいました!」





「・・・白石って鈍感なんだな。いや、だからこそおまえなんだけどさ。」




 先輩の優しい瞳がまっすぐ私を捕らえる。あまりに綺麗すぎるものだから、私も先輩から目が離せなくなってしまった。
そうこうしているうちに小山先輩が私の目の前に移動していた。
よく見ると先輩の目はどこかはかなげで、抱き締めたいと心が叫んだ。




「白石にとって・・・俺ってなんだ?」




あぁ、これだ。私が憧れた先輩のまっすぐさ。




「先輩は・・私の憧れで・・・でもライバルで・・・私にとってとても大きな存在です・・・」




恥ずかしさなんて頭の中にはなくて、あるのはただ先輩に伝えたい自分の素直な気持ち。





「・・・俺は白石の憧れの存在にも・・・ライバルにもなりたくない」






そんな目で、そんな声で私を惑わせないで。なにを言うべきなのかわからなくなってしまう。






「白石の・・特別な存在で在りたい・・・異性として。」

「え、せんぱ・・・



突然だった。自分の唇に、今まで感じたことのない柔らかさと温かさがあった。

解放されたときには頭が真っ白だった。ぼーっとしながら小山先輩を見上げる。

「・・それは反則。俺そこまで我慢強くないから。」
体中が熱くなるのが自分でもわかる。


「・・・なんでですか?なんで私なんです?」


「わからない・・・でもすごく愛しく思うよ・・・おまえのこと。」


そう言って再び柔らかなほほ笑みを見せる。

私は・・・この人をどう思っているんだろう?はっきりした言葉が出てこなくて・・・あるがままの思いを口にしてみる。


「私・・よくわからないです・・・先輩のこと、そういうふうに見たことがなかったので・・・」


私の言葉に小山先輩が少し俯く。そうすると私との距離が少し縮まった。


なぜだろう。この人は私にいろんな顔を見せてくれて、その度に私の心は揺さ振られる。目の前にいるあなたが・・・愛しくてたまらない。ぎゅっと包み込んであげたい。あなたの体温を感じてみたい。
ねぇ、人はこれを『愛』と呼ぶの?



「先輩・・・」


俯いていた先輩の左頬にそっと手を置き、右の頬に軽くキスを落とす。


自分でもわかるくらい顔が火照っていて前が見れない。


「・・・白石?」


しゃがんで私に目線を合わせながら先輩が尋ねてくる。


「先輩・・・私、恋をしていたみたいです。」




先輩の澄んだ瞳をしっかり見つめ返し、私はぽつりぽつりと告げた。

先輩の腕が腰に回ってきて、そのまま抱き寄せられる。そして深い深い口付けを交わした。
お互いの存在を・・・二人の間に生まれた感情を感じ取るように・・・。

「今日おまえの誕生日なのにな。俺ばっかりうれしい思いしてる。」

「そんなことないですよ?私、今日が今までで一番最高の誕生日です!」







甘いミルクチョコも

あなたと交わしたキスには
かなわない

甘い甘いキスの味


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