[携帯モード] [URL送信]

short novel
イヴはあなたのとなりで
吐いた息が白い

君と繋いだ手が

とても暖かい






もうすぐ待ちに待ったクリスマスがやってくる。
街はもう眩しいイルミネーションで飾り付けられていて、
すれ違う人たちの顔には笑顔が輝いていた。
でも私の心は沈んだまま・・・
あぁ・・・なんでこんな思いしなきゃいけないの?




『ごめん!!!』
彼の第一声はこれ。
『・・・本当に??』
『ほんとごめん!!理由はちょっと言えないけど、クリスマスイヴ、一緒に過ごせそうにないんだ・・・』





これはつい三日前に私と彼の間に起きた出来事。
理由が言えないって・・・どーゆうこと!!!??

どうでもよくなってしまった私は、一人寂しく街中をうろうろしている。
せっかくのイブだっていうのに・・・一人ってないわ。
周りの人が哀れそうな目で見てるし・・・もうやだよぉ。

辺りを見ればカップルばっかり。
なんで私・・・一人でこんなところ来てるんだろう・・・。
かばんの中には彼へのプレゼントがちゃっかり入っている。
中身は不器用ながらも一生懸命に編んだマフラー。
ありきたりだけど、彼はマフラーを持っていなかったんだもの。
それで色々探し回ったのだけれど、いまいちぴんとくるものがなかったから・・・。



寂しさを紛らわすために出てきたはずが、余計に虚しくなっちゃったよ。
ねぇ、竜。君はいったい何をしているの?
・・・誰と会っているの?


考え出したら止まらなくなって、私は涙を隠すように被っていた淡い桃色のニット帽を深く被りなおした。

はぁ・・・家に帰ろう・・・。




なんでこんなに寒く感じるのかなぁ?
冬だから?
それとも・・・

となりに君がいないから?







とぼとぼ歩きながら家を目指す。
おにいちゃんは今頃彼女といちゃいちゃしてるのかなぁ〜・・・。
あ、お母さんとお父さんも今日は出掛けるっていってたなぁ。
私も彼と大切な一日を過ごすはずだったのに・・・。
もう・・・参っちゃうなぁ。


下を向きながら歩いていたら、電柱にぶつかりそうになって、自分の馬鹿さ加減に飽き飽きしてしまう。



気が付いたら自分の家のすぐ近くまで帰ってきていた。
ちょっとため息を漏らして自分の家の前に立つ。
その時、私は一瞬目を疑ってしまった。


「・・・遅い〜!」


私の家のドアの前で蹲っていた人が、上着に顔を埋めながら、目だけをこちらに向けて話しかけてきた。


「・・・竜?」


私は門に手を書けたままの状態で、ただただ呆然と立ち尽くしてしまった。

だって・・・今日は一緒に過ごせないっていってたよね?
なのに・・・

「・・・どうしているの?」

竜はぱっと立ち上がって門の前まで来ると、私の頬を両手で包み込んだ。

「ゆきのほっぺあったかいねぇ。あれ?でもなんか目が赤いよ?」

「・・・泣いたんだもん。当たり前だよ。」

「え!?あ、もしかしなくても原因は俺?」

私は目線を足元に落として黙り込んだ。竜に会えたのは正直とっても嬉しい。
でも・・・なんだか素直に喜ぶのはちょっとやだ。

「ごめん・・・ごめんね?ただ・・・ゆきを驚かせたかっただけなんだよ。」

そう言って、竜は上着のポケットから小さな箱を取り出した。
赤い箱にはキラキラ光る白いリボンがちょこんと飾られている。

「これ・・・これを買うために、ちょっと時間がかかっちゃってさ。」

竜はぎこちない微笑みを浮かべて、私にその箱を差し出した。
戸惑いながらも、彼からの贈り物が嬉しかったものだから、私はついつい頬を赤くさせてそれを受け取った。

「・・・開けてみ?」

言われるままにリボンを解いて、箱のふたをそっと開けてみる。


「気に入ってもらえると嬉しいんだけど・・・」

中には雪の結晶を模ったシルバーのネックレスが入っていた。

「え?これって・・・」

「いいでしょ?これ見た途端に、ゆきにあげるのはこれしかない!!って思ってさ。」

頭を掻きながらはにかむ彼がとっても可愛く見えて、愛しく見えて。
あぁ、これが惚れた弱みってやつなのかなぁ?なんて思っちゃったり。
さっきまでの不安はどこへやら。


「・・・一人にさせてごめん。これを買うためのお金がなくって・・・バイトして必死にためてたんだけど・・・給料日が25日だったんだ。だから間に合わない、って焦っちゃって・・・。で、でも!!店長が機嫌良かったおかげで買いに行けたんだ!!!」


「・・・ばか。心配したじゃない・・・でも・・ありがとう。」


私は嬉しいやら悲しいやら、とにかく涙が溢れてきちゃって、貰った箱をぎゅっと握り締めながら言った。
そしたら竜が門を開いて私の頭を撫でてくれた。


「泣かないでよ・・・ね?今日はイヴだし!!あ、泣かせちゃってるのは俺なんだけど・・・・
えっと・・・




一緒に・・イヴを過ごしてくれませんか?」


竜が私の目線に合わせるように膝をまげて、顔を覗いてきた。
私も顔を上げて竜の目を真っ直ぐ見つめて答える。



「・・はい・・・喜んで。」







ケーキも

ピカピカ光る飾りも

何もいらないわ

君が
いてくれさえすれば

それが私にとっての

一番幸せな
クリスマスイヴ







☆おまけ☆

「まさか誰もゆきの家にいないなんて思わなかったからさぁ・・・ずっと玄関で待ってたんだよ?」

「え!?ご、ごめんなさい・・・さ、寒かったよね?あ、これ・・・私からのプレゼント。見た目悪いけど・・・勘弁してください・・・」

「・・・マフラー?ゆきが編んでくれたの?」

「うん・・・や、やっぱちゃんとしたの買うべきだよね!!ごめんね!!!」

「ううん!!ありがとう!!!!ゆきが作ってくれただけで嬉しいよ♪ゆき大好き!!!!」

「!!!・・・わ、私も竜大好き!!!恥」


backnext
[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!