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short novel
桜舞い桜咲く
この花たちは知っているのかな
いずれ必ず枯れてしまうのだと―――





まだ少し寒さが残る・・・桜の花びらが風に乗ってヒラヒラと舞落ちる・・・私は君に出会った・・・ 一目見て恋に落ちた。特に変わったところがあるわけじゃなかった。ただ、君のまわりにはたくさんの人がいて、暖かな雰囲気に包まれてる人だった。
それが羨ましくって、憧れて・・・
でも、あなたは雲のうえの存在だった・・・
今でも、あなたを好きになったこと
後悔なんてしてないよ




「璃瑚〜教室移動だぞ〜行こう!!」
そう言って私の席に走ってきたのは井原ゆかり。高校に入って一番始めに仲良くなった子。
「あ、そっか。ちょっと待ってぇ〜準備するから。」私は鞄の中をあさり、教科書とノートを探す。
「あったあった!!よし、いこう!!」
私たちは教室を後にした。その時、ある男の子とぶつかってしまった。私は教科書を床にばらまいてしまい、慌てて拾おうとした。
「うわ、すんません!!」相手も慌てて座り込む。私も謝ろうと相手の顔を見た。

一瞬心臓が止まるかと思
った。それは私がずっと思い続けていた人だったから・・・。
私が呆然としていると、彼が私を不思議そうに眺めてきた。私は我に返り、彼が広い集めておいてくれた物を奪うように受け取り、お礼を言ってから急いでその場から立ち去った。
少し走ったところで、ゆかりがにやにや笑いながら待っていた。
「うふふ〜璃瑚ぉ〜よかったねぇ〜まるで漫画のワンシーンみたいだったよ!」「そ、そんな・・・そんな綺麗なものじゃないよ。」私の言葉にゆかりが切なげな顔を見せた。だから無理矢理にっこり笑って、「でもラッキーだった!」と言ってみたりした。


私が好きになった人は、4組の辻井直哉くん。
入学式で彼を見て恋に落ちた・・・彼の持つ雰囲気が大好き。

でも・・・彼には大切な人がいた。それを知った時の私といったら・・・一日中泣きまくって、隣ではゆかりが私の背中をさすってくれていたっけ。
それでもやっぱり好きだから、私は今も彼を見つめ続けているの。



「よ〜し、ここまで!号令〜」
午前の授業が無事終わり、私はゆかりと一緒に屋上に行ってお昼ごはんを食べることにした。
「あ〜疲れたぁ。勉強はめんどーだよ。やんなってくる。」
「まぁまぁ、学生だから仕方がないよ。」
私がお弁当をあけると、ゆかりがいつものように卵焼きをひょいと掴み、口に入れる。
「う〜ん!!やっぱりあんたが作る卵焼きは最高!!これ食べるだけ元気になれる!!」
ゆかりは満足そうな顔をしてピースサインをした。この子はなぜだか私の作る卵焼きを気に入っていて、私のお弁当箱にはいつもこいつが入っている。
「これをあいつに食べさせてあげたいねぇ。」
そう言って私をつん、とつつく。あいつとは辻井くんのことだ。私は「そうだね」と言って、今日の朝のことを思い返していた。
思い出すだけで顔が熱くなる。最近、みているだけじゃもの足りなくなってきちゃって・・・やばいなぁ。
「ちょ、ちょっと璃瑚!!あっちみて!!」
ゆかりが興奮して私の手をぶんぶん振る。何がなんだかわかっていない私は、とりあえずそっちに目を向けた。
そこには辺りをきょろきょろ見回している辻井くんの姿・・・思わずドキッとしてしまった。
だけど、いったい何をやってるんだろう?誰か探してるのかなぁ?
ふとそんなことを考えていたら、辻井くんがこちらを見た。
「あ!!」
彼はそう叫ぶと、こちらへ走ってきた。
「え!?どーなってんの?」
ゆかりが私の隣であたふたしている。と、そんなことをしていたら、辻井くんが目の前に立ってペンを差し出してきた。
「・・・え?」
「いや・・・あの、これ君んでしょ?!朝ぶつかっちまった時に落としていったんだよ。渡そうと思ったらすっごい早さで走ってっちゃったからさぁ。」
「あ、ありがとうございます。」
私にすまなそうにしながらも、あったかい笑顔を向けてくれる・・・これは夢かなぁ?私、今辻井くんとしゃべれた?
「返せてよかった!んじゃ!!」
彼が行ってしまう・・・どうしよう・・・こんなチャンス二度とないかもしれない・・・!!

「・・・あの!!」

びっくりした。いや、彼も突然呼び止められて驚いているけど・・・気付いたらことばが出てきてしまってた。

「ん?どうした?」

「えっと・・・友達になってもらえませんか!?」

恥ずかしい。何いってるんだろう、私。辻井くんだって変な奴って思ってるよ・・・。
私は我慢できなくなって下を向いた。すると、頭の上から陽気な声が聞こえた。
「もちろん!あ〜俺4組の辻井直哉っす!」
「1組・・・片倉璃瑚・・です。」
「片倉さんね!了解!」

キーンコーンカーンコーン
丁度その時、お昼の終わりを告げるチャイムが鳴った。
「あ、鳴っちまったぁ〜んじゃ片倉さん、またね!」
辻井くんは走っていって行ってしまった・・・。



その後の私と言ったらまるで脱け殻みたいだった。ゆかりが何か話し掛けてきても、ただ「うん」と返事するだけだった。







ずっと遠くから見ていたはずの彼。名前は覚えてもらえた。でも他は何にも変わらないだろうなぁ〜と思っていたのに。
廊下ですれ違う時、挨拶をしてくれたり、たまに極短いものだけど言葉を交わしたりした。毎回毎回、それが夢みたいで。

気付いた時には、もう手遅れだった。
抑え続けていた気持ちが、だんだん大きくなってきてしまっていた・・・。

ねぇ、決して受け入れてもらえない気持ちだけど・・・せめて伝えることだけでも・・・。




「ゆかり、私決めたよ。」
「・・・何を?」

ゆかりは感の良い子だから、もう気付いてる。

「私・・自分の気持ち伝えてくる。けじめつけてくる。」

私の言葉にゆかりは少し複雑な顔をした。でもその後私の目をしっかり見て、「うん・・・」と言ってくれた。

私はその日、廊下ですれ違った辻井くんに挨拶をし、小さくたたんだ紙を何気ない風に渡した。



――伝えたいことがあります。放課後、屋上に来てくれるとうれしいです。――




授業が終わって、私は屋上へと足を運んだ。自分でも分かるくらい足が震えてる。
屋上の扉をそっと開くと、辻井くんはまだいなかった。気分を紛らわすために、まわりの景色を眺めた。
下には桜の木がある。春には綺麗な花を咲かせる。
彼を思うようになった季節・・・。私にとって、とても大切な日・・・。



「ごめん、待った?」

「ううん。」

鼓動が早くなる。

「・・・私、辻井くんのことが好きです・・・」

必死に絞りだした声・・・君に聞こえたか心配。

「大切な人がいるのは知ってるよ・・・でも、止められなかったの。だから、気持ちだけでも知っててもらいたくって・・・」

あ、目が泳いでる。やっぱり困らせちゃった?

「あ・・・別に何も望んでないよ?だから・・・」

そんな顔しないで。私の大好きな笑顔を見せて。

「・・・ごめん、気持ちには答えてあげられない・・・・でも、ありがとう。」
あ、やっと笑ってくれた。そうだよ、そのあったかい笑顔が、優しい言葉が。
大好きだったんだよ。

「うん。こちらこそ、来てくれて、私の話聞いてくれてありがとう。」

うまく笑えてるかなぁ?


辻井くんはもう一度ありがとうと言って、屋上を後にした。
私はただ一人、屋上から桜の木を見ていた。

「あはは・・・悲しいけど、なんか晴れ晴れした気持ちだなぁ。」

私の頬を涙が濡らした。





花はいずれ枯れてしまう

それは仕方がないこと

でも

何も残さないわけじゃない
消えてしまうわけじゃない
また会ったときには

綺麗な花を咲かせて

太陽の暖かい光に

照らしだされる




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