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short novel
五月雨(中編)
言い返そうとした私の口は開いたまま。ふと頭をよぎった血まみれになった自分の手 。腕の中でぐったりしている圭吾。
「あぁーー!!!!!」

蘇る映像。血に塗られた皮膚の匂い。貴方の氷のような体温。

耐えきれなくなった私は病室を飛び出し一心不乱に走った。
途中で人にぶつかったけれど気にせず、再び走り出す。
病院の出入り口を抜けると、外はじめじめした水が激しく降り続いていた。
どこに向かっているかなんてわからない。
でもこの雨を抜けたら貴方がいるんじゃないかって。笑顔で傘を差しながら「ずぶ濡れじゃんか、ばぁか」とか言って傘を持つ手とは反対の手で私の濡れた体を抱きしめてくれるんじゃないかって。

「圭吾・・どこ?ねぇ圭吾・・・?」

私は病院の敷地を出てなにもはいていない足をよろめきながら進ませる。

雨のためいつもより交通量の多い道路。
自動車が横を通り過ぎるたびにあの時の光景が頭をよぎる。

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