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long novel
中2,俺の悩み
変わらない町の景色。

変わり始めたのは俺の景色。









「よし!これで8-2!!」
スパッと綺麗にゴールへと吸い込まれていくボールを見つめ、俺は健一と幸也にハイタッチをする。

いつもと変わらない日々。
俺たちは今日もバスケをやる。毎日毎日、大きな声を出しながら5人で走り回る。

気付けばもう春。

俺たちは中学二年生になっていた。クラス替えをし、1組が俺・大・健一、2組が幸也・久人。クラスが違うことなんて関係ない。俺たちは5人でいることが当たり前になっていた。
こうやって笑い合える友達がいるのはやっぱり良いもんだ。


久保田は1組だった。中1の時の出来事から、少しずつだけど話すようになった。久保田が一生懸命話しかけてきてくれることがなんだか嬉しく思えた。








「なぁ晶。少し気になることがあるんだけど・・・。」
1ゲーム終えスポーツドリンクを飲んでいた俺に幸也が遠慮がちに話しかけてきた。その声はやけに小さかった。
「ん?なんだ?」
「・・・ちょっと前からなんだけどさ。誰かに見られてる気がして仕方がないんだよ。」
「へ?」
俺はペットボトルのふたを閉め、鞄へ投げ入れた。そして体ごと幸也へ向く。少し離れたところでは他の三人がシュート練をしている。
「いや、確証はないし・・・誰かが見てるからって別に支障はないんだろうけど・・・ちょっと気になってな。」
「他の奴らに言ったか?」
「言ってない。というよりまともに考えてくれそうなのが晶しかいないからな。話していない。」
「そか。わかった。俺も少し注意してみるよ。」
俺の返事に幸也が礼を述べた。幸也は敏感な性格だからそういうことは気になってしょうがないんだろうなぁ。

「お〜い!二人とも何やってんだ?早く次やろうぜぃ!!」
ボールを高々と上げながら、健一はキラキラ輝く顔を向けてくる。
「おう!今行く!!」
そうして駆け出す俺と幸也。


青い空には白い雲が浮かび、俺たちを優しく見守っていた・・・









「じゃあ今日は先週行った春休み明けテストを返します。」
担任の福西が微笑みを浮かべる。
「菊池くん。」
名前を呼ばれ、前に出ていく。「はい、もうすこし頑張ってくれないと困るわねぇ。」
にこにこ笑いかけてくる福西。女ってほんと嫌みが大好きだなぁ!!
俺は黙ってテストを奪い取り、ドサッと席につく。
偶然また隣の席になった久保田が心配そうに話しかけてきた。「き、菊池くん?テストなんて・・・別に大丈夫だよ!気にしないほうが・・・いいよ!」
「ん、そうだな。ありがとう。」
「う、うん!」
やっぱり久保田は笑顔が一番いいと思う。まだ少しぎこちなさは残るけど、悲しそうな顔は二度とさせたくはないな。
「久保田さん。」
「は、はい!」
慌てて席を立つ久保田は机の横にかけてある荷物に転けそうになる。俺は笑いを押さえるので必死だった。













「よっしゃ〜終わった!大、晶、2組に二人迎えに行こうぜぃ!!」
「・・・そうだね。」
「おい大、お前大丈夫か?すっごく眠そう。」
俺が大の顔を覗きながら言うと、健一が大きな笑い声を上げた。
「あはは!大が眠そうなのはいつものことだろうが!!」
「ま、確かに。」
「・・・え、なに?」
「いや、何でもないさ。んじゃ行くか!!」
俺たちは鞄を取りに自席に戻る。
丁度久保田も帰ろうとしていた。
「お、久保田また明日な!!」「う、うん!!また明日!!」笑顔で言う久保田に俺は一瞬変な感情を抱いた。
まぁ、きっと気のせいだろう。






「こーうーやくーん、ひーさーとくーん!!」
「健一、キモイから止めろ。」顔を歪めて嫌そうにする幸也に健一が「幸也冷たい〜」とブーブー言う。
「バスケだぁ〜僕放課後が一番楽しいよぉ。」
にへらっと笑う久人に俺の顔も緩む。
「俺もだよ。んじゃ今日も競争な!!今日はぁ〜ビリになった奴が帰りに鞄持ち!!」
俺たちはアップついでに広場まで走っていく。これもお決まりのルールの一つ。
「もうこっから始めちまおうぜ。今日の俺様はひと味違うぜ!覚悟し「よーいドン!」
健一の言葉を聞かずに4人はスタート。その後をギャーギャー言いながら健一が追いかけてくるのもお決まりのパターン。









「はっはっ・・・ちくしょう・・・お前らいつもいつもひどいぞ!もう知らん!!」
ほっぺたをぷくっと膨らませてブーたれる健一に幸也が一言。「よし、んじゃ健一抜きでやるか。」
「待ってこうくん!!それあんまり!!!ごめんなさい。もうなんも言いませんから!!」
慌てて土下座をし出す健一に一同大爆笑。
「ほら、もうそろそろ立てよ。グーパーするぞ!」
俺と幸也がグー、他三人がパーを出し本日のチームが決定された。
「んじゃ晶たちが先攻だな!」
一つしかないバスケットゴール。それでも俺たちには十分だ。こうやってみんなでバスケができりゃそれでいい。

「久人ー!晶にシュート打たすなよー!!」
そう言われて俺をマークしまくる久人。その時にふと違和感を感じた俺。

あれ?なんか高い。

どうにかして久人を振り払おうとしたができない。
そういや最近こんなんばっかだ。調子が悪い。

「晶、こっち。」
そう言って俺の横に走り込んできた幸也にパスを出す。
抜かれた大が幸也を抑えようと走ってくる。が、その上を軽々と超えて、幸也の打ったシュートがゴールにスポッと収まる。
「あ〜そんな離れたとこから打つなよ〜俺がゴール下守ってる意味ねぇじゃん!」
「これも作戦のうちだ、馬鹿。」
その言葉に悔しがる健一を眺めながら、気づいたことを口にする。

「・・・なんかお前ら大きくなったよな。」

俺の言葉に4人が首を傾げる。「久人今何センチ?小学校からどれくらい伸びた?」
「う〜ん、今は168センチくらいかなぁ?多分10センチくらい伸びたよぉ〜。」
何気ない顔でそう口にする久人をまじまじと見つめた後、他の三人にも目で訴えかける。
「俺は今〜163センチだなぁ。」
「・・・165センチ。」
「166.3センチ。」
上から健一、大、幸也の順で身長を言っていく。

なんてこった!俺なんて155センチだってのに!!

「まぁまぁ、身長なんて関係ないだろ!お前はこの中で一番上手いんだし問題なっし!!」
俺の背中をバシバシ叩きながら励ます健一に俺は苦笑いを向ける。
「そうだよぉ。あーくんの父ちゃんおっきぃんだし、これから伸びるよ!!」
久人も俺に励ましの言葉をかけてくれる。
なんだか逆に惨めになってきてしまった。

「まぁいいか!!いつかお前らより大きくなってやる!!」



その時、広場を眩しそうに見ている人がいた。俺たちはそんなことも知らずに広場を駆け回っていた。














太陽が傾き始めた時、俺たちは鞄を健一に預け、手ぶらで道を歩いていた。
「健一〜遅いぞ〜」
笑いながら健一を見ると、健一はわざと恨めしそうな目をして「呪ってやる」と低い声で唸っていた。
「あーもう!このおっもい鞄は誰のだよ!!」
「俺のだが何か?」
「いえいえ、なんでもございませんよ!幸也くん!!」
額に汗を浮かべる健一と黒い笑みを顔に浮かべる幸也。
ふと思いついたように大が口を開いた。
「・・・健一、ボールは?」
はっとした表情をしたあと、健一がすまなそうに俺を見る。
「わりぃ・・・荷物多すぎて忘れてきたみたいだ。」
俺は健一に大丈夫だと一言と告げて走り出した。向かうは広場!助け出すのは俺のマイボール!!



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