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とても、大切なこと
F



「…んっ」


昔からずっと望んでいた事。
ゆっくりと離れていった唇に名残惜しさを感じながらレンの顔を見る。
すると、レンはフッと笑って俺の顔に手を添えた。



その瞬間、言い表し方の無い様な不安がよぎる。

だんだんと近付いてきているモンスターにたいしてではなく、単純に嫌な予感がする。


慌てて、レンの手に自分の手を重ねた。


「……アイル。―――‥」


口に出そうとしていた言葉は声になっていなかった。


口の動きだけじゃ、俺にはわからなくて……。



ゆっくりと目を閉じたレンには、聞き返す事だってできないんだ。


「なぁ、嘘だろ…!?」


いくら呼びかけたって返事は返ってこない。



「う、うわあぁぁあぁ」


俺は狂った様に叫ぶ。
駄目なんだ。俺にはレンがいないと。




――――…生きていけないんだよ、レン。



そんな俺の思考を遮るかのように、多人数の足音が遠くから聞こえる。


城からの助けだ。すでにあまり働かない頭でぼんやりと思った。



(…レンは助かるのか? レン、レン‥!)



ふと気が付くと、真後ろに何かがいる気配がする。


「……っな!?」



レンの事しか頭になかった俺は、すぐ後ろにいるモンスターに気が付くのが遅すぎたんだ。





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