お互いの恋愛事情【連載中】
メガネ
―…どのくらい眠っていたのか。
シャーッ!
ベッドのまわりを囲っているカーテンを乱暴に開ける音で、あたしは目を覚ました。
目の前にはカーテンを開けたらしい人影が立っていて、ボンヤリと白い服が見える。
メガネを外したあたしに相手の顔ははっきりとは見えないけど、ここは保健室。
まずは勝手にベッドを使ってしまったことを先生に謝ろうと、
「…先生、すいません。ベッドを勝手に…、」
急いで身体を起こして手探りでメガネを探し―…、
「あぁ〜、小林さんか。メガネかけてなかったから誰だかわかんなかった。」
聞こえてきたそのおちゃらけた声に、思わずその動きを止めた。
メガネをかけていなくても、よく見れば先生じゃないことくらいわかったはずなのに…。
体格も、服装も、髪色も、先生とは全く違うのに…。
「小林さん、メガネとったら美人じゃん。」
なぜ間違えてしまったのか。
寝起きのせいか。
体調不良のせいか。
理由はいくらでも付け足せる。
けど、よりによって…、
「あー、見えないのか。ほい、メガネ。」
間違えて話し掛けてしまったその相手は、あたしが最も苦手な人種、
『不良』の『森川マサト』だった。
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