お互いの恋愛事情【連載中】 なんでダメなの? 「あぁ、気にすんな。」 たったそれだけの言葉なのに、森川マサトの声がすごく優しく聞こえたのはなぜだろう。 お互いの沈黙で妙な間が空く。 何かしゃべらなきゃって思うんだけどうまく言葉が出てこなくて。 でも何かしゃべらなきゃ、森川マサトがどこか行っちゃう気がして。 なんだかすごくもどかしい気持ちになる。 でも。 なんで? なんで、森川マサトがどっか行っちゃダメなの? 謝ったんだからもういいのに。 いつもなら関わりたくないって思うのに。 「…あっ!」 ふと、大事なことを思い出して思わず大きな声が出た。 そうだ。 まだ制服を返してないんだ。 制服渡さなきゃって思って保健室に来たのに、肝心の制服がカバンに入れっぱなしだった。 「…ごめん。制服、今持ってない。」 「ん。いつでもいい。」 やっぱり優しく聞こえる森川マサトの声。 さっさと制服を返してしまえば、これ以上不良の森川マサトと関わらなくて済むはずなのに、 なぜか「後で教室で渡す」とは言えなかった。 [*前へ][次へ#] [戻る] |