お互いの恋愛事情【連載中】
気付いたこと
あたしの手に持っている白い布。
ソレはもちろん、さっき保健室で森川マサトの手から奪ってきた、自分の嘔吐物がベッタリ付いた森川マサトの制服で。
気が動転していたあたしは、ずっとソレを手に持ったまま電車に乗っていたことになる。
まわりの反応を気にする余裕もなかったけど、まわりの人は相当迷惑だったに違いない…。
それと、もう1つ。
たった今気付いたことがある。
あたしがこの白い布を持ってきてしまったってことは…。
心なしか、自分の心臓の音がさっきより大きくなった気がする。
あたしが持って帰ってきた制服は、彼がその場で脱いだもので、
あのとき森川マサトの上半身は裸の状態だった。
ということはまさか…。
こめかみに冷たい汗が流れていき、
まさか、森川マサトは。
あたしのせいで上半身裸のままで帰る羽目になったんじゃ…?!
とんでもないことに今頃気付いてしまったあたしは、枕に押し付けた顔をガバっと持ち上げた。
あの場で気付くべきだった…!
森川マサトが上半身裸だったことで気付くべきだった…!
どうしよう。
あたしが制服をひったくったせいで森川マサトを裸で帰らせたんだとしたら。
どうしよう。
あたしのせいで森川マサトが警察のお世話になってたりしたら。
昨日保健室にいたときとは違った、イヤなドキドキが止まらない。
それと同時に、
処女だと図星さされてアタフタし、制服を嘔吐物で汚すという、
今まで他人に見せたことのないような恥ずかしいところを森川マサトに見られたことまで思い出して。
腹が立つやら、恥ずかしいやら。
情けないやら、申し訳ないやら。
自分でもわからない感情がジワジワと込み上げてきた。
…かと言って、今さら嘔吐物の付いた制服を返しに学校には戻れないし、
謝りの電話をするような親しい仲でもなければそんな勇気もない。
どうしよう。
どうすればいい?
どうするべきなの、こんなときは…?!
わからない。
わからない。
こんなこと初めてだからわかるわけない。
考えてもわからない。
どうしていいかわからない。
考えれば考えるほど、今日の出来事を頭の中で何度も再生してしまって余計にゴチャゴチャする。
もうダメだ。
考えるだけムダだ。
むしろ、考えるほど悪化してる気さえする。
こうなったら、そうだ。
こんなときは、いっそ…。
寝てしまおう…!
あたしは枕に顔を埋め、すでにカピカピに乾いてしまった嘔吐物の付いた白い布を握りしめたまま。
嘔吐物のニオイに混じって鼻をかすめる香水に今日の保健室でのことを思い出しながら、深い眠りについた。
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