保健室のシズマ先生【7ページ完結】
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「『3年3組、春日ユウ。』ホントにそろそろヤバいぞ。」
「…何が?」
「しらばっくれんな。授業日数に決まってんだろ。」
いつもヤバいヤバいとは言われていたけど、さすがにそろそろ本気でヤバいらしい。
「そうやってか弱い女子高生を保健室から追い出すんだ…。」
「本気で留年する気か、お前は。」
「それは……、」
…先生ともう1年長く居られるならいいかも。
「今、くだらねぇこと考えたろ。」
「ひど。くだらなくないもん!」
「じゃあ言ってみろ。」
「…そ…それは…。」
「それは?」
「……。」
「なんだ、その目。」
「……。」
「……。」
「…先生のバカ。」
「んだと?」
先生はわかってない。
「人の気も知らないくせに。」
「授業に出たくないちゃんとした理由があるなら言えよ。」
「……。」
「カウンセリングも受けてるぞ。」
「……。」
「……。」
「……。」
「……。」
「…先生は、」
「ん?」
「………あたしが留年したら困る?」
―…なんて。
そんなこと、聞くまでもないのに。
困るに決まってる。
『仕事』なんだから。
生徒を無事に卒業させるのも先生の仕事で。
担任じゃないにしても、あたしが留年したら先生達はいろいろ大変なんだから。
聞かなくたって答えはわかってたはずなのに、先生に対する嫌味を言った。
言ったら後悔するってわかってるのに、言わずにいられなかった。
ほら。
「お前、留年だけは絶対すんなよ?」
自業自得。
身から出たサビ。
追い討ちをかけるように先生の言葉が胸に刺さる。
こう見えて先生は仕事熱心なんだから。
あたしはただの生徒の中の一人なんだから…。
「もう一年待たされるのは拷問に近い。」
「………え…?」
先生の言葉の意味がわからなくて、下向いてた顔を上げようとした瞬間。
唇に感じた、柔らかい感触。
それが先生の唇なんだって理解するまでしばらく時間がかかったけど、理解してすぐに小さな音を立てて離れた。
「……今の…、…?!」
ハッと我に返って顔を上げると、
「意味わかったら授業出てとっとと卒業しろ。」
いつものようにめんどくさそうな口調で、
「今のっもっかい…!!」
「アホか。早く卒業しろっつったろ。」
あたしの大好きな、先生には見えない保健室のシズマ先生は優しくフッと笑った。
End.
2011.2.14 水月サララ。
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