あたし限定ホストクラブ2【120ページ完結】
『好き』
「『アカリは俺を見てくれる?』って、そういう意味だったんだね…。」
あたしがスグルに抱きしめられたまま言うと、スグルは、
「言ってからすごく後悔した。」
ボソッと呟いた。
…あの時すぐに表情を隠してごまかしたのは、あたしに知られたくなかったから?
だから、あたしに言ってしまったことを後悔したの?
あたしは、あの言葉はスグルが本心を言ってくれたようでうれしかったのに。
スグルはやっぱりあたしに内面は見せたくないってこと…?
あたしは、スグルに近付けたと思ったらまた壁を感じて。
またチクッと胸が痛くなる。
「アカリは、ちゃんと俺を好きだって言ってくれてるのに…ごめん。」
「…え?」
予想外の言葉に、顔を上げて聞き返すと、
「アカリは、ちゃんと『俺』を見てくれてるから。」
スグルはフッと優しく笑った。
自分のことを話すのが苦手なスグルが言いたかったこと。
それはたぶん、
あたしは『スグル』が好きであって、スグルの『顔』を好きなわけじゃないってスグルはわかってたのに、
それを疑うような言い方をしてしまったことを後悔した。
こういう意味なんじゃないかと思う。
まわりにとってはキレイでうらやましいスグルの顔は、
スグルにとっては他人が『スグル』を見る上で邪魔になる物であって。
価値や、感じ方は人それぞれ。
かっこよくて、優しくて、完璧に見えるスグルにだって、他の人と同じように不安や悩みや弱い部分がある。
…わかっていたはずなのに。
普段表情にそういう面を出さないスグルは、やっぱり不安なんてないんじゃないかってあたしは心のどこかで思っていたのかもしれない。
あたしは、初めて『スグル』の内面を見せてもらえた気がして。
自分の弱い部分を見せてくれたスグルが愛おしくてたまらなくなって。
「スグル?」
「うん?」
「あたし、『スグル』が好き。」
スグルを見つめて、改めて『スグル』が好きなんだって伝えたら。
「俺も、『アカリ』が好きだよ。」
スグルはあたしの大好きな笑顔でそう言って、甘くて優しいキスをしてくれた。
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