あたし限定ホストクラブ2【120ページ完結】
初詣
一年の最後の日。
大晦日。
あたしとスグルは、神社に来ていた。
人込みに紛れたあたしの耳に、どこかで誰かが鳴らす鐘の音が聞こえる。
人生初…!
彼氏と夜中の初詣!
憧れの夜中デート!!!
これがドキドキせずにいられるだろうか!!!
否。
超浮かれ気分!!!
人込みの中でも、夜は冷えて吐く息は白くなり、指を絡ませて握ったスグルの手の温かさがあたしの手に伝わってきて。
外は寒いのに浮かれ気分のあたしの顔だけは、やけに熱い。
「すっごい人だね!」
あたしが話し掛けると、スグルは、「うん。」って頷いて、優しい笑顔をあたしに向けた。
「俺、夜中の初詣初めてだからびっくりした。」
え…?
初めてなの?
ホントに?
ちょっと意外だった。
いや、かなり意外だった。
ホストって夜中にデートとかしてそうなイメージなのに…!
あたしは、スグルが自分と一緒に『初めて体験』をしたことに、口元の緩みを隠せなくて、
「スグルは何をお願いする?」
ごまかすためになんとなく聞いてみたら、
「言ったら叶わなくならない?」
スグルがクスッと笑ってそう言った。
そうか…!
お願いは言ったら叶わないのか!
危うくペラペラしゃべって初詣をムダにしてしまうところだった!
…とはいえ、まだ何をお願いするかも決まってないあたしは、
人込みの中、スグルに手を引かれて、少しずつ賽銭箱に近付きながら願い事を考える。
…スグルとずっと一緒に居られますように?
いや、ママやミチルもいなくなったら困る。
…みんなずっと一緒に居られますように?
いやいや、貧乏神や疫病神も一緒に居られても困る。
むむむ…。
願い事って結構難しい…。
何て願えばいいんだろう…?
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