あたホス番外編〜キョウヤ〜【13ページ完結】
名前
半年後―…。
「キョウヤ!あたし、妊娠した!」
帰ってきたキョウヤに、妊娠検査薬の陽性反応を見せると、キョウヤは目を大きく開く。
「オレ、パパになんのか!」
キョウヤは、あたしをギュッと抱きしめると、
「…やべぇ。すげぇうれしい。」
優しい声で、囁いた。
「名前、決めなきゃな。」
「名前はもう決めてんの。」
あたしの言葉に、キョウヤは抱きしめた腕を解いて、あたしの顔を見た。
「何て名前?」
「女の子だったら『アカリ』。明るい子になるように。」
「男だったら?」
「考えてない。」
「なんだよそれ。」
キョウヤが笑って、あたしの肩を抱き、おなかを愛おしそうになでる。
「まだ、触ってもわかんないよ。」
「でも、この中にいるだろ?」
「あたしとキョウヤの子供が、ね。」
「うん。」
キョウヤは、あたしのおなかを愛おしそうに、何度も何度もなでる。
そして、おなかをなでながら考えていたらしいことを、あたしに言った。
「男だったら『ユウ』がいいな。優しい子になるように。」
「優しい子の『ユウ』か。いいじゃん!」
『アカリ』と同じくらい、単純明快。
気に入ったあたしは、キョウヤにニッと笑ってみせる。
「キョウヤみたいになったら困るもんね。」
「なんだと。オレより優しいやつはいねぇ。」
キョウヤが冗談交じりに言う。
「………そうかもね。」
あたしは、キョウヤに聞こえないくらい小さな声でつぶやいて笑った。
女の子だったら明るい子になるように『アカリ』。
男の子だったら優しい子なるように『ユウ』。
生まれてくる愛しい我が子の名前を、2人で考えた。
それがすごくうれしかった。
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