あたホス番外編〜キョウヤ〜【13ページ完結】
嫉妬
キョウヤの部屋に押しかけて4ヶ月。
仕事から帰って来たキョウヤは、客の女と電話をしていた。
あたしとしゃべるときとは違う、優しい言葉遣い。
甘い話し方…。
あたしはイライラした。
子供扱いされてる自分にイライラした。
自分がどれだけキョウヤに相手にされてないかと思うと、イライラした。
キョウヤにとって、あたしは『女』じゃなくて『子供』。
『恋愛対象』どころか、『欲情の対象』にもならない。
あたしはそのイライラを、電話を終えたキョウヤに、ぶつけた。
「他の女には優しいんだ?」
トゲのある言葉に、キョウヤはキョトンとあたしを見ると、いつものように、口角をあげて笑う。
「オレはすべての女に優しいんだよ。」
その言葉に、あたしはムッとして言い返す。
「じゃあ、なんであたしには優しくしてくんないの?」
「住まわせてもらっといて言うセリフか、それは。」
キョウヤがクスクス笑うから、あたしはまた子供扱いされた気分になって。
「今の人とはエッチしたの?」
あたしにはしないくせに…。
顔も見えない電話相手への嫉妬。
キョウヤは突然のあたしの言葉に、驚いた表情を見せている。
図星なの?
あたしだって今まで何もしなかったわけじゃない。
目の前で見せ付けるように着替えることだってあった。
それでもキョウヤは素知らぬ顔。
あたしには、頭をなでる以上のことはしない。
肌に触れることすらしない。
完全に子供扱い。
キョウヤから見たあたしは、そんなに子供なの?
「したんでしょ?!」
「…何言って、」
「なんで、あたしとはしないの?!なんであたしのことは抱こうとしないの!?」
「おい…ちょっ、」
「あたしはキョウヤに子供扱いされるほど子供じゃない!」
「待てっ、」
「4ヶ月も手を出してこないなんて、不能なんじゃないの!!!」
キョウヤの言葉なんて全然聞かずに叫ぶだけ叫んで、クッションを投げ付けたあたしを、飛んできたクッションを手で弾いたキョウヤがじっと見据える。
その目はニラんでるようにも見えて…。
…怒らせた…?
キョウヤは無言で、あたしを見据えたまま、ソファから立ち上がり、ゆっくりとあたしに近付いてくる。
…怒ってる…!!
キョウヤがあたしの目の前で足をとめ、あたしに手を伸ばした瞬間、あたしの体が強張った。
…殴られる…?
…それとも、引きずって部屋から放り出される…?
でも…、
強張ったあたしの体からはすぐに力が抜ける。
あたしの体は、キョウヤの腕の中にスッポリおさまっていて。
初めて、あたしは自分の体に、キョウヤの温かさを感じた。
呆然としているあたしの耳元で、
「不能じゃねぇよ。我慢強いと言え。」
キョウヤが笑う。
「足腰たたなくしてやるから覚悟しろよ。」
甘く囁くと、キョウヤはあたしを抱き上げ、寝室へ連れていくと、ゆっくりとベッドの上に下ろした。
キョウヤの顔があたしに近付き、あたしの唇にキョウヤの唇を重ねる。
そのまま覆いかぶさるように、ゆっくりとあたしをベッドに押し倒し、角度を変えて何度も何度も唇を重ねた。
それだけで、あたしの頭は真っ白になり、ぼーっとする。
顔が熱くて。
鼓動が今までにないくらい速くて。
息が苦しい。
でも、…全然イヤじゃない。
「…お子ちゃまには、興味ないんじゃ、なかったの…?」
子供扱いされたくなくて吐いた、余裕ぶったセリフすら、余裕なんかなさすぎてうまく言えない。
「不能とまで言われちゃほっとけねぇ。」
キョウヤは余裕の表情で妖艶に笑う。
…悔しい。
こんなときまで子供扱い。
でも、あたしの体に触れるキョウヤの手や唇が熱くて。
心地よくて。
愛おしくて…。
それは、あたしが今まで一度も感じたことのない感覚だった。
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