あたホス番外編〜キョウヤ〜【13ページ完結】
『幸せ』です。
「ママ…。スグルのこと、いつまで『ユウ』って呼ぶの?」
本名の『スグル』と呼ばずに、ずっと店の名前の『ユウ』と呼んでいるあたしに、
アカリが頬を膨らませて言う。
『スグルのホスト時代の名前』だから、
きっと、アカリにとっては『客に呼ばれていた名前』で、おもしろくないのだろう。
でも、あたしにとってはクセというか…、
なかなか今更変えにくい。
「いいじゃんね、『ユウ』。」
あえてユウに同意を求めると、ユウはアカリの頭をなだめるようになでながら、
「俺が呼ばれるのはいいけど、アカリが嫌がることはしたくないです。ナツコさん。」
と、ちょっと眉を垂らす。
「あ、そうだ。今日はジジババくるからユウ紹介しなきゃねぇ。」
話をそらすように言ったあたしの言葉に、アカリがピクッと顔を上げて。
「おじいちゃんとおばあちゃん来るの!?」
うれしそうに目を輝かせる。
「言ってなかったっけ?」
「言ってない!」
シレッと言ったあたしの言葉に、アカリの声が大きくなった。
「ママ、ちゃんと『スグル』って紹介してね!」
「はいはい。」
えらく張り切るアカリを見て、思わず笑ってしまう。
ユウも、うれしそうなアカリを見るのがうれしいらしい。
あたしが、両親に反対されるのをこわがって、
あのまま家を飛び出していたら…。
あのとき、キョウヤが止めてくれなかったら…。
アカリは、おじいちゃんおばあちゃんを知らないまま育っていた。
キョウヤ…。
いつだってキョウヤは、あたしに大切なことを教えてくれた。
あたしは、『あたし』らしくていいんだってことも。
あたしが両親に愛されてるんだってことも。
家族に祝福されるってことも。
人を『愛す』ってことも。
『幸せ』ってどういうことかも―…。
キョウヤ。
あなたに出会えて本当によかった。
あたしは、
『幸せ』です。
END.
■管理人に感想を送る■
あとがき。→
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!