あたホス番外編〜キョウヤ〜【13ページ完結】
『ユウ』
キョウヤがいなくなって12年―…。
キョウヤがいた店はもうなくなっていたけど、
あたしはフラッと、ホストクラブの扉を開けた。
ふと、目にとまった名前。
『ユウ』
キョウヤが、子供につけたいと言っていた名前…。
『優』ではなく、『ユウ』と書かれていたけど、
なぜか、すごく興味をひかれた。
どんな子なのか、どうしても見てみたくなった。
あたしの前に出てきた『ユウ』は、ずっと笑顔を絶やさない子だった。
いつでも笑顔。
かわいくて。
素直で。
優しい子。
だけど、本心は見えない。
そんな子だった。
「ユウってポーカーフェイスだよね。」
面と向かって言ってみたあたしの言葉に、
「そうですか?」
ユウは、優しく笑う。
この子の本心を見てみたい…。
そう思った。
「ポーカーフェイスのユウちゃんって呼んでやるっ。」
冗談半分に言ってみたけど、意外としっくりきた。
『ポーカーフェイスのユウちゃん』
「笑ってませんか、俺。」
「顔は笑ってるけど、中身はわかんない。」
あたしがユウの目をじっと見つめると、ユウはちょっと困ったような笑顔になる。
始めはただの『好奇心』だった。
でも、それは『親心』にかわっていったのかもしれない。
あたしは、ユウの笑顔の裏側が見てみたい。
キョウヤと会う前のあたしが、大人ぶって本心ををごまかしていたように、
ユウも、笑顔で何かをごまかしてるんじゃないか、と。
月に1度は店に行き、週に2、3回はユウに電話をした。
普通なら、こんな客イヤがるだろう。
でも、ユウは電話に必ず出てくれた。
どんなに絡んでも、ちゃんと相手をしてくれた。
笑顔でごまかそうとしてるわけじゃなくて、
笑顔以外で、どう表現すればいいのかがわからない。
ただ感情をうまく表に出せないだけ。
この子は、ホントに優しい子で、こんな見た目だけどすごく真面目な子なんだと、あたしは知った。
そして、あたしは…、
『アカリ』の話にだけは、
いつもと違った反応を示すようになったユウに気付いた。
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