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あたホス番外編〜キョウヤ〜【13ページ完結】
愛情


あたしの言葉にだか、涙にだかわからないけど、
あたしを見た両親がひどく驚いた表情を見せた。

あたし自身も驚いたんだからムリもない。




あたしが親の前で涙を見せたのはいつ以来だろう。
最後に泣いたのは小学生だったかもしれない。


あたしは、いつも親に反抗してた。

お姉ちゃんみたいにはなれないから。
あたしはお姉ちゃんとは違うから。

そう言えずに、あたしとお姉ちゃんの違いを行動で示そうとして。
やることなすこと、すべて叱られて。
あたしの存在を否定された気になって。

いつも強がって。
寂しくないフリをしてた。
あたしは子供じゃないから大丈夫って自分にずっと言い聞かせてた。



そんなときに出会ったのがキョウヤだった。

キョウヤは、あたしを優しく包み込んでくれて、大切なことを教えてくれた。
あたしはお姉ちゃんにならなくてもいいんだと。
あたしはあたしでいいんだと…。





両親とあたし自身が驚く中で、キョウヤだけは優しい笑顔のまま、あたしの頭をクシャッとなでる。


「キョウヤくん…と言ったか?」

「はい。」

お父さんの問いに、キョウヤが短く返事をして、それを確認したお父さんがポツリポツリと言葉を放つ。




「…ナツコは、まだ子供だ。」

「…はい。」

キョウヤが小さく返す。


「無茶を言うし、手がかかる。」

「……はい。」


「言うことを全く聞かんで突っ走る。」

「……はい。」




やっぱり、あたしが子供だから、キョウヤと結婚するのは許さないつもりなんだ…。
子供をおろせって言われる…?



でも、例えそう言われたとしても、あたしはキョウヤと結婚して、この子を生む。
あたしがキョウヤにしてもらったみたいに、愛情を注いで育てる。

絶対に、この子を『幸せ』にする。



お父さんの言葉を聞きながら、あたしは覚悟を決めた。






「しかし…、それは、親の愛情不足らしいな。」

「…え…?」

予想と違う方向に話が流れ、思わず声が出たあたしを見て、お父さんが、寂しそうに笑った。



「お前が親に不満を持っているのを知っていながら、どう接していいかわからず…、すまなかった。」



深々とあたしに頭を下げたお父さんを見て、あたしの目からはまた、涙が溢れ出す。


あたしのぼやけた視界の隅に、あたしと同じように涙を流すお母さんの姿が、映った。





…あたしは、親から心配されてないわけではなかった。
お互い、気持ちをうまく伝えられなかっただけ。
すれ違ってただけ。

あたしは、ちゃんと両親に愛されていたんだ。
あたしが気付かなかっただけで…。



キョウヤが言ってた『親になればわかる』って意味。
…ちょっとだけ、わかった気がした。





「ナツコは、自慢の娘だ。『幸せ』にしてやってくれ。」

「はい。」


あたしの頭を優しくなでるキョウヤにそう言った、お父さんの声はかすかに震えていた。




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