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サクヤとミズホ【38ページ完結】
誰でもいいわけ?


…な…、なに!?
『ヤる』って何を!?
なにを『ヤる』の…!?



突然のことで頭がついていかない。
何がどうなってるんだかわからない。






パニック状態のあたしの首筋に、サクヤの唇がかすかに触れると、あたしの身体は思わずピクンッと反応して。





「抵抗しないとこのままヤるぞ。」


サクヤの言葉に、身の危険を感じたあたしは、


「…ッ!ヤるわけないでしょ!?」


力いっぱいサクヤを押しのけた。






「ちっ。」

思いっきり押し退けられたサクヤは、冗談っぽく口角を上げて笑って、あたしから身体を離し、あたしはまたからかわれたんだと気付く。





毎度、反応してしまう自分が恨めしい。

あたしの心臓はまだバクバク音を立て、激しく動き回っていて、顔が熱くて。
あたしにとってはこんなにドキドキしてしまうキスが、サクヤにとってはあたしをからかうための行動に過ぎないってことが悔しくてたまらない。


サクヤはキスなんて何とも思ってなくて、誰とでもこんなことやってんのかと思うと、なんとも言えない気持ちになって。







「…誰でもいいわけ?」


平然を装い、呆れたようにため息をつきながらそんなことを呟き、赤くなった顔を隠すように、そそくさとベッドから降りようとした瞬間…、





「誰でもよくねぇよ。」

「……ぇ?」


背後からサクヤの声が聞こえ、振り返ると、





「見た目も重要。」


見惚れるような妖艶な笑みを浮かべるオレ様な幼なじみ、サクヤの発言が聞こえた。




「…何様よ…。」

今度こそ心底呆れたあたしは、その言葉しか思い浮かばない。





…なんであたしはこんなやつに惚れてるんだろう。








「ミズホ、腹減った…。」


サクヤの行動にあたしは毎度頭を悩ませてるというのに、当の本人はダルそうに体を起こし、何事もなかったかのようにあたしに腹の具合を訴え。



「…自分で作れば?」

「オレ、料理できねぇ。」


「……。」

「腹減った。」



「………雑炊でいい?」




結局、あたしが逆らえずに、いつものようにご飯の用意をしてしまうのは、






「ミズホが作るもんならなんでもいい。」



オレ様のくせに、時々うれしいことを言ってくれるサクヤの言葉が聞きたいからなのかもしれない。





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