サクヤとミズホ【38ページ完結】
触らせんなよ
なんで泣いてるかだなんて…、
そんなの言えない。
…言えるわけない。
サクヤが好きなのに、サクヤが好きになってくれないからだとか。
サクヤがあたしのこと『都合のいい女』としか思ってないからだとか。
それでもあたしはサクヤが好きで、どうしたらいいかわからないんだとか。
サクヤ本人に言えるわけない…。
昨日の女の子は誰?とか。
あたしの他に何人セフレいるの?とか。
サクヤにとってあたしは何?とか。
聞きたいことだって山ほどあるけど、聞けない。
だから、
「泣いてないしっ。」
あたしは、俯いたまま、精一杯の明るい声で答え、
「…へぇ。」
「……っ!!」
突然、スッと伸びてきたサクヤの手があたしの目の下の涙を掬うから、あたしは驚いて思わず顔を上げてしまった。
……しまった…!!
サクヤに泣いてたことがバレる…!!
…どう言ってごまかそう?!
アクビしたとか、花粉症だとかって…、
「泣いてねぇならいい。」
いろんな言い訳を必死に考えていたあたしに降ってきたのは、サクヤの意外な言葉と。
あたしの頭をクシャっと優しく撫でるという意外な行動で。
いつも意地悪でエロいサクヤの珍しい行動に驚き、涙を隠すことも忘れてサクヤを見つめるあたしに、
「ミズホ。」
「…ぇ?」
「襲うぞ。」
いきなりあたしを抱き寄せて、鎖骨の下に唇を押し当てた。
「…ちょ…サク、ヤ…!?」
抵抗する間もなく押し当てられた唇は、チクッとした小さな痛みの後すぐに離れ、
「オレ以外に触らせんな。」
離れた唇の場所には、不敵に笑ったサクヤの赤いキスマークがくっきりとついていた。
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