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サクヤとミズホ【38ページ完結】
なんで泣いてんだよ

二階にあがってきた足音は、あたしの部屋の前でピタッと止まり、





バンッ!!!






勢いよく開いたドアの音に驚いてガバッとベッドから飛び起きると…、







「なんで起こしにこねぇんだよ…。」

「…サ…、サクヤ…!?」


少し怒ったようなサクヤが開け放されたドアの向こうに立っていた。




「…なんでって……、風邪…ぶり返して…。」

ホントのことなんて言えないから、あたしは無難なウソをついて。


「風邪なら風邪ってメールくらいしろよ。寝坊して学校サボった。」

それに対してサクヤは大きなため息をつく。






…サクヤ、怒ってる?
あたしが起こしにいかなくて遅刻したから…?

あたしはやっぱりサクヤにとって『都合のいい女』なの…?







そんなことが頭をよぎり、


「熱あんのか?」

「…あ、ううん。もう全然…。」


いきなり聞かれてあたしが慌てて答えた瞬間。



ほんの一瞬。
ホントに一瞬だったけど、サクヤが安心したようにフッと優しい笑顔になった。






たったそれだけで、あたしの胸がキュンとなる。
たったそれだけで、あたしはやっぱりサクヤが好きなんだって改めて思わされる。







でも…。


その気がないなら優しくしないでほしい。
好きでもないなら、はっきり突き放してほしい…。





サクヤの顔を見るだけであたしの目頭は熱くなってくる。


サクヤが好きなのに、サクヤに好きになってもらえなくて。
身体の関係があっても、恋人じゃなくて。
サクヤの存在はすごく近いのに、心はすごく遠い。







「オレの見舞い、泣くほどうれしいのか?手ぶらだけど。」

いつものように口角をあげてイタズラに笑ったサクヤは、後ろ手でドアを閉め、パジャマ姿のあたしが座るベッドの上に座った。



あたしとサクヤの距離は50cmほど。

手を伸ばせば届く距離。
サクヤに触れようと思えば簡単に届く距離。


だけど、触りたいのに触れない。

これがあたしとサクヤの距離…。







「…プリン…食べたかったなー…。」

にじんできた涙や、サクヤが近くにきたことへのドキドキをごまかすために、俯いてボソッと冗談っぽく呟くと、


「オレが来てやっただけで十分だろ?」

ってオレ様なサクヤは自信まんまんに返してきて、







「…で、ホントはなんで?」

「…え…?」



「ホントはなんで泣いてんだよ。」

いつもの意地悪な笑顔ではなく真剣な表情のサクヤが、キレイな茶色い瞳であたしの顔を覗き込んだ。




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あきゅろす。
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