サクヤとミズホ【38ページ完結】
終電
「……早く寝てよ。」
「なんでだよ。」
「…お風呂入れないじゃない。」
「…………はぁ?」
サクヤが寝たらお風呂に入るつもりのあたしが、なかなか寝ようとしないサクヤに頬を膨らませて呟くと、サクヤは思いっきり眉を寄せた。
「オレが寝るのと風呂とどう関係あんだよ。」
「……いろいろ。」
「いろいろってなんだ。」
「……女の子の事情。」
サクヤはあたしの言葉に、眉を上げて見せると、
「意味わかんねぇ…。」
納得してくれたのか、諦めたのか、小さく笑みを作り、
「風呂から上がったら起こせよ。」
もぞもぞとベッドに潜り込んで目を閉じた。
サクヤが寝てくれてホッとしたあたしは、着替えを持ってお風呂に向かって、
「お風呂から上がっても、起こす必要なんてどこにあんのよ…。」
…なんて考えていたのに。
「サクヤ!サクヤ…!」
「…ん…、風呂入った?」
「あたし、どこで寝るの?布団がないんだけど…!!」
結局、寝ているサクヤを半泣きで叩き起こし、
「ベッドしかねぇんだから一緒に寝るに決まってんだろ。」
「……!!?」
予想外の言葉を突き付けられた。
サクヤは眠そうに目をこすると、イタズラな笑みを浮かべて、あたしをグイッとベッドに引っ張り込んで。
サクヤのあったかい腕の中にスッポリ収まったあたしは大慌て。
「あた、あたし床でいいから!」
お風呂上がりで、体温が高いせいか、いつもよりドキドキしてしまう。
「この間も一緒に寝たくせに。」
「あれは…、サクヤ熱出てたから…。」
「熱あってもなくてもやってることはかわんねぇ。」
「…そういう問題じゃなくて…。」
「でも、ベッド以外に寝るとこないし、もう終電ないから帰れないぞ。」
「……、!!!?」
今、何て言った?
終電って言った?
もしかして、もしかして。
「…泊まらなくても晩ごはん作れたんじゃ…。」
「…知ってて泊まるんじゃねぇのかよ。」
あたしは、サクヤに『晩ごはんのために泊まれ』って言われて、なぜか『晩ごはん作ったら泊まるしかない』と思い込んでいて、
『ご飯を作ってから帰る』って選択肢が頭からスッポリ抜けていたことに、今頃気付いたのだった…。
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