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サクヤとミズホ【38ページ完結】
写真


「サクヤ、写真撮ってもいい?」


朝ごはんを食べ終わった頃、あたしは鞄から使い捨てカメラを取り出した。



「写真?オレの?」

「そう。」


「…ミズホがほしいのか?」

「ち…ちがっ!」


あたしは慌てて否定する。





「…友達に頼まれた。」



サクヤは顔がいいから、写真を欲しがる子はたくさんいて、隠し撮りするような子も少なくない。



「誰。」

「…言えない。」


「……。」

「……。」




無言で睨み合い、怪訝な表情であたしを見たサクヤは、ハァーっとため息をつくと、


「まぁいいや。好きにすれば。」



突然、カッターシャツのボタンを外し始めた。




「ちょ…!!脱がなくていいから!!」

真っ赤な顔で慌てるあたしに、






「期待した?」

「……ッ!!」

そう言ったサクヤの顔は、いつもみたいなイタズラな笑顔で、あたしはまた、からかわれたんだと気付いた。



いつもそう!
いつものことなのに、つい反応してしまう自分が恨めしい!





「もう、なんでもいいから撮る!!」


あたしが頬を膨らませて、何度かシャッターを押して、サクヤをカメラに収めていくと。




数枚撮ったところで、フレームから見えるサクヤの顔がこっちに近付いてきて。



「なんで動くのっ。」

「おもしろくねぇ。」


フレームに入りきらないくらいあたしに近付いたサクヤが、こっちに手を出してきた。




「…何?」

「よこせ。」


「…なんで?」

「写真撮んだよ。」




そう言ってあたしの手から使い捨てカメラを奪ったサクヤは、慌てるあたしを余所に、


「いい顔しろよ?」

妖艶な笑みを浮かべたかと思うと、








「……ッン!?」

あたしの唇にサクヤの唇を重ねてシャッターを押した。





一瞬の出来事で、思わず目を見開いて固まったあたしに、平然としたサクヤがカメラを差し出し、



「これくらいやらなきゃ、おもしろくねぇだろ?」

誰もが引き付けられる、意地悪で魅惑的な笑みを浮かべた。











「えー!わざわざ現像してくれたのー!?」

「…あはは。つ…ついでにね。」



あんなのが入ったカメラを渡せるわけがない!!!




現像した写真には、やっぱりあたしとサクヤがキスしてるところがしっかり写っていて。

あたしは、人には見せられないその写真だけを抜き取り、捨て…、








…るの、もったいないから、こっそりもらっておいた。





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