サクヤとミズホ【38ページ完結】
『サクヤ』
「サクヤ〜!おーきーてー!」
あたしは平日は毎朝、自分の家を出たらサクヤを起こしに行く。
「…もーちょっと…。」
ベッドで長い睫毛を伏せ、まだ目も開かないサクヤ。
いつもはツンツンの茶髪が、ワックスをつけていないせいでサラサラしている。
毎朝のことながら、いくら呼び掛けても起きないサクヤにさすがにイラッときて、
「起きろー!!!!」
一気に布団を剥ぎ取ると…、
「ぎゃああぁぁあぁぁぁ!!!」
あたしの悲鳴で、
「…うっせぇな…。」
サクヤが眠そうに目を開いた。
「なんで裸で寝てんのよ!!!?」
「…風呂入ったら眠くなったから。」
サクヤが目をこすりながらモゾッと裸の体を起こすから、あたしは慌てて後ろを向く。
なんであたしが朝っぱらからサクヤの裸を見なくちゃいけないのか!
あたしだってこれでも年頃の乙女なんですけど!!!
怒りやら恥ずかしさやらで一人悶々しているあたしの気を知ってか知らずか、
「ミズホ…。」
サクヤが眠そうに声をかけてくる。
「…な、なによ?」
裸のサクヤを直視なんて出来なくて、サクヤの姿が見えないように背中を向けたまま返事をすると。
「パンツとって。」
「……ッ!!!」
あたしとサクヤは恋人では決してない。
俗に言う、『幼なじみ』。
家が近所だったから、物心つく前からあたしはいつもサクヤと一緒だった。
でも、あたしとサクヤが高校に入学してすぐ、サクヤの両親は仕事の都合でドイツ永住が決定。
ご近所だったサクヤの家は売却され、サクヤ自身も両親とともに日本を離れてはるか遠くのドイツに住むことになる。
―…はずだったんだけど、
実際には、
「メシは和食が一番うまい。」
という理由でサクヤがドイツ行きを断固拒否!
両親の必死の説得もむなしく、両親との同居より和食を選んだサクヤは、日本に残って一人暮らしをすることになったのだった。
ワックスでツンツンに立てた薄茶色の後ろ髪。
整えられた勝ち気な眉。
くっきり二重の綺麗な茶色い瞳。
筋の通った鼻。
形のいい唇。
182cmの長身。
細身で筋肉質。
授業をサボる癖に成績優秀。
気が向いたときにしかやらないスポーツも万能。
完璧!!
完璧人間なの!!!
ただ一つ。
『性格』を除けば…。
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