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ノンシュガーバレンタイン【12ページ完結】
気持ち


シンイチは、あたしが言葉を発してから、すぐには口を開かなくて。









「確かにありがたい話なんだけど…、」

しばらくの沈黙の後、ふいに口を開いたシンイチは、





「俺が一番ほしいチョコもらってない。」

そう言って寂しそうに笑った。





シンイチの表情と、その言葉に、あたしの心臓は予想外にギュッと締め付けられる。







『一番ほしいチョコ』って、『本命』だよね?

シンイチ、やっぱり好きな人がいるんだ…。




…シンイチに彼女がいないのは知ってたけど、
好きな人はいるかもしれないとは思ってた。


だから、あたしは自分の気持ちを伝えたいって思っても、
シンイチに好きになってもらおうとか、
彼氏になってほしいとか、

そんなことは期待してなくて。




ただ、
『あたしは、シンイチにドキドキする』ってことを知ってもらいたいと思っただけ。
『あたしはシンイチのことが好き』ってことを伝えたかっただけ。


そう思ってたはずだった―…、









「…ミキ??」


何の反応も見せずにただボーッと考え込んだあたしに、シンイチが心配そうに声をかけ、


「あ、ううん。なんでもない!」

あたしは、慌てて笑顔を作って手を左右に振ってみせる。







シンイチに好きな人がいるとわかった瞬間、自分で思ってたより胸が痛んだのは、
あたしがシンイチのことを好きだから。

シンイチが、あたしのことを『ただの友達』としか見てなかったとしても、
あたしはシンイチのことが好きだから。



ホントは、フラれたって平気なわけじゃない。

シンイチにはっきり『他に好きな人がいる』って言われたら、さっきよりもっともっと胸が痛くなる。
シンイチと気まずくなって話すことすら出来なくなってしまうかもしれないし、
シンイチの気持ちをはっきり聞かされるのは正直こわくてたまらない。







でも。


それでも、あたしは今日シンイチにこの気持ちを伝えると決心したから―…。











小さく深呼吸をして、震える手で紙袋をギュッと握り、それをシンイチの目の前に差し出して。





「はい。あたしの気持ち!」


自分に出来る限りの笑顔を作った。




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あきゅろす。
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