ノンシュガーバレンタイン【12ページ完結】
はっきり
…ついに言った。
シンイチに好きだって言ってしまった…。
だけど。
シンイチはあたしのことなんてただの友達としか思ってないだろうから。
あたしはフラれても「やっぱり」って思えるように、
自分が傷つくのが少なくて済むように、あんな言い方をした。
…それでもシンイチの返事を待つ時間はこわい。
心臓がバクバク音をたてて、
口の中がどんどん乾いてきて。
2月の教室は寒いはずなのに、寒さなんて全く感じなくて、
寒さを感じてないはずなのに、手が震える。
そんな状態のあたしに返ってきたのは…、
「何で?」
シンイチのすっ呆けた言葉だった。
「……何で、って…。」
あたしは口ごもる。
…言わなきゃいけないの?
「シンイチには好きな子がいるから、あたしが諦めつくようにはっきりフッてください。」って、そう言わなきゃいけないの…?
フラれるのがわかっていて、はっきりフッてくれるのを待ってるあたしにとって、
シンイチの返事が長引けば長引くほど、どんどん惨めになっていく気がして。
シンイチを見つめていたはずの視線がどんどん下がっていく。
どうしても口を開くことが出来ず、下がっていく視線があたしの足元をとらえた頃、
「俺、『はっきり』言っていいの?」
聞こえてきたシンイチの声に、あたしは顔をあげられなかった。
シンイチはちゃんとあたしが言ったことはわかってくれてたらしい。
でも、シンイチが『はっきり言う』ってことは、あたしはフラれるってこと。
今からフラれるってこと。
「…うん。」
あたしは、今度こそ覚悟を決めて小さく頷く。
「んじゃ、遠慮なく『はっきり』言う。」
あたしの耳に、ちょっと不貞腐れたようなシンイチの声が聞こえて。
うつむいたあたしがギュッと目をつぶった瞬間、耳に届いたのは―…、
「俺もミキが好き。」
遠慮がちな。
でも、はっきりとしたシンイチの声だった。
びっくりして思わず勢いよく顔を上げると、顔が真っ赤になったシンイチと目が合って。
「……『はっきり』言ってみた。」
シンイチのはぐらかしたような答えも、ふて腐れたような態度も、
それはシンイチの照れ隠しなんだってわかった。
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