ノンシュガーバレンタイン【12ページ完結】
覚悟
俺の問いかけに、ミキは口を開かない。
バレンタインにチョコじゃなくて、ビーフジャーキーってなんだよ。
義理チョコのかわり?
冗談?
俺のことからかってんの…?
ミキの考えてることがわからなくて、少しばかりイライラしながらミキを見つめていると、
「シンイチ、甘いの苦手なんでしょ?」
ミキがそう言ってフッと微笑んだ。
「…、…なんで…。」
俺は驚きを隠せない。
なぜなら。
甘い物が苦手だってことを、学校で誰かに言ったことは一度だってないし、
『バレンタインにチョコもらえなくなるよ』って兄貴に言われて、
中学時代にチビでモテなかった俺は、それを隠していたから。
なのに、なんでミキは俺が甘いの苦手だって知って…、
「ずっと見てたから。」
…ミキの言葉に、俺の心臓がドクンと大きな音をたてる。
「シンイチが、調理実習で作ったクッキーを女の子にもらってたときも。」
鼓動が速くなって。
「マドレーヌもらってたときも。」
自分の鼓動がやけに鮮明に聞こえる。
そんな言い方されたら、俺すげぇ期待しちゃうんだけど…。
でも。
「シンイチ、牛乳で流し込んでたでしょ?」
ドキドキし始めた俺の心臓をあざ笑うかのように、ミキはおかしそうにクスクス笑っていて…。
…ミキは冗談のつもりなのか?
俺が甘い物苦手だからって、口直しのためのビーフジャーキーくれただけ?
ただの友達としての親切心ってこと?
それとも、俺をからかって楽しんでんの?
今日がバレンタインだってことに期待しちゃってる俺って…やっぱりバカ…?
そう思ったとき。
「あたし…、」
ミキの顔からさっきまでの楽しそうな笑みが消え、
「シンイチが好き。」
不安そうな顔で俺を見据えたミキは、
「でも、覚悟は出来てるから。はっきりフッてくれていいよ…。」
少しだけ笑ってみせた。
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