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あたし限定ホストクラブ1【85ページ完結】
触りたい


あたしは、シズさんに言われた通り、隣の部屋のドアをそっと開けた。

ドアは軋む事なくゆっくりと開き、自分の体を部屋の中に滑り込ませて、
音をたてないようにゆっくりと閉めた。




さっきいた部屋と同じくらいの大きさ。
真ん中にはテーブルとソファ。


そのソファで、スグルは丸くなってスースーと寝息をたてていた。




起こさないように静かに近づいて、スグルの寝顔を覗き込む。
スグルはしっかり熟睡しているようだった。


平日は学校に行って、放課後デートして、夕方から仕事のスグル。
…疲れているに決まっている。




長いまつげを伏せて、熟睡しているスグルを見ていたあたしは…。





『触りたい。』





なんでかわからないけどそう思った。





自分の心臓がドクンドクンいってるのが聞こえる。
顔が熱くて、赤くなってくるのがわかる。


あたし、何してんのって自分で思ってんのに。

あたしの手がスグルのほっぺにちょっとだけ触れる。



スグルは起きない。




あたしはスグルのやわらかそうな栗色の髪も触ってみたくなる。



そっとスグルの髪をなでてみた。

…思ったよりもっとやわらかい髪。
男の子に触ったことなんてないからどうしたらいいかなんてわかんない。

ただ、触ってみたくて、髪に指を通す。

サラっと落ちるスグルの髪。



スグルがちょっとくすぐったそうに身じろぎした。






でも、まだスグルは起きない。





人間って強欲。
髪を触ったらまた別のとこが触りたくなるんだ。



あたしは、まだ眠っているスグルの顔をじっと見つめた。

あたしの心臓の音がどんどん大きくなる。
音が大きすぎてスグルに聞こえちゃうんじゃないかと思うくらい大きくなっていく。





目に留まったのは…スグルの唇…。
キレイな形の唇。


そっと、スグルのキレイな唇を指でなぞる。






あたし以外の時間が止まってるんじゃないかと思うくらい、
聞こえてくるのは速く響くあたしの心臓の音だけ。

おなかの中がキューっと熱くなる。



なんであたしこんなことしてるんだろう。
あたし、変だ。








気がつくと、あたしは自分の唇をスグルの唇に重ねてて。





自分の唇にスグルの唇の感触を感じ、急に恥ずかしくなったあたしが、
慌ててスグルの唇から自分の唇を放した瞬間。

スグルの長いまつげが動いて目がパチっと開いた。






…バレた…?!!
あたしがスグルにキスしたこと気付いた!?








スグルは目を見開いてあたしをじっと見つめている。






…恥ずかしい!!
きっとスグルに変な女だと思われた…!!
自分からキスするなんて。

シズさんに襲われないようにと言われて、襲ってるのはあたしの方だなんて。

仕事相手に寝込みを襲われたらスグルもかなりの迷惑だろう…。



すごく恥ずかしくて、情けなくて、あたしの目は潤んできた。

潤んでしまったその目で、あたしはスグルの反応を伺う。






「…アカリ?」

スグルの声に思わず、あたしの体がピクッと反応する。





スグルは、さっきスグルの唇から放したあたしの手を取って、優しく握り。


「アカリ、かわいい。」

「………え?」


「目、二重になったね。」




…よかった…。
あたしがキスことには気付かなかったみたい。



あたしはホッと息をついて緊張していた顔の筋肉を緩める。

安堵からか、口元まで緩んで自然と笑みが零れた。



「アカリ、すっげーかわいい。」

スグルが優しく微笑んであたしの頭をなでる。




あたしは、今までにないくらい、胸がキュンっと締め付けられたのを感じた。







やっぱり…あたし、なんか変だ…。




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