あたし限定ホストクラブ1【85ページ完結】
お迎え
次の日の放課後、スグルから『迎えに行くね。』とメールがあった。
…迎えに行くって、どこに?
スグル、場所書き忘れたね…?
連絡先交換し忘れたことといい、スグルは意外とおっちょこちょいなのかもしれない。
スグルはそそっかしいなぁ、なんて笑いをこらえてニヤニヤしているとミチルにものっすごい気持ち悪がられた。
そんで、おでこに手を当てて熱を計られた。
とりあえず、昨日の駅まで行ってからスグルに連絡しようと思いミチルと一緒に教室を出る。
「この間の雑誌どうだった?」
「うん、ありがと。毎日めくってる!」
「毎日めくっていい服あった?」
ミチルがクスクス笑う。
「ん〜…服も買いに行かなきゃなんだけどまだ…。」
「じゃあ今日行ってみる?!」
ぱっと顔を輝かせて楽しそうに言うミチル。
だけど。
ミチルのそのありがたーい申し出に、あたしの胸が痛んだ。
今からスグルが駅まで迎えにきてくれるはずだから、今からミチルと買い物に行くことは出来ない。
明日もたぶんそうなる。
その次の日もそうかもしれない。
どうするの?
あたしは自問自答を繰り返す。
このままミチルに、スグルのこと黙っててどうなるの?
やっぱり隠しっぱなしはミチルに申し訳ないし、あたしのことをいろいろ考えてくれてる親友ミチルには、
スグルのことをきちんと話しておくべきだと思った。
むしろ、やっぱりこの間雑誌を買いに行った日に話すべきだったと後悔する。
今からでもミチルに伝えよう。
スグルのこと聞いてもらおう。
あたしはそう決心して。
「ごめん…あのね、ミチル…。」
「うん?」
ゆっくりと口を開いた。
「……。」
「…?」
何から話始めたらいいのかわからず、会話が途切れる。
あたしは必死に言葉をさがす。
昇降口を出て、トボトボ歩きながら、まず何からいうべきなのかを考えた。
言葉を探しながら歩くあたしの横を、ミチルは黙って歩く。
そして、
「あのね、ミチル。あたし…、」
あたしがなんとか言葉を搾り出そうとしたとき、
「アカリ。」
あたしの言葉を遮るタイミングで、聞き覚えのある声に名前を呼ばれた。
顔をあげると、そこには…、
「スグル?!!」
昨日と同じく、制服姿のスグルが校門前に立っていた。
「な…、なんでここに…!?」
目を丸くするあたしに、
「迎えに行くってメール送らなかった?」
ニッコリ笑うスグル。
下校中の生徒たちがみんなスグルをチラチラ見ていく。
「目立つね、ここ。」
苦笑して、あたしの手を昨日と同じように繋ぎ、
あたしの隣でスグルに見とれているミチルに気付くと、さわやかな営業スマイルを向けた。
「ごめんね。アカリ借りてもいい?」
ミチルがうなずくのを確認してからスグルは、ミチルに「ありがとう。」って微笑んで、
あたしの手を握ったまま駅のある方向に歩き出した。
ミチルは、呆然と立ち尽くして、去っていくあたしたちを見送っていた。
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