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あたし限定ホストクラブ1【85ページ完結】
『シズ』


車から降りると、正面にはなにやらオシャレな建物。



スグルさんは何の躊躇もなくガラスから灯りがもれるその扉を開けた。



「いる?」

「おー、いらっしゃいっ!」

すぐに女の人の声がして、スグルさんに手を引かれて中に入ると、
さっきの声の主らしい茶髪をキレイにまとめ上げたお姉さんがあたしを見てひどく驚いた顔をした。



あ…あたしってそんなブサイク?!
驚くほどのブサイクさ!?
確かに一重まぶただし陰気臭い外見ですけどね?!
自分でもわかってるんですけどね!?


あたしがホストクラブの扉の前でママにもらった小さな『自信』は、
一瞬で吹き飛ばされるくらい軽かった。





でも、

「スグルが女の子連れてくんのめずらしいね。」

ブサイクは関係なかったらしい。




「ん。期間限定カノジョ。」

楽しそうに笑うスグルさん。


「何それ、おもしろそうじゃん。教えてよ。」

この人も楽しそう。




ここがどこなのか、
何しにきたのか、
この女の人が誰なのか、
スグルさんとはどういう関係なのか、
期間限定恋人の説明はいつなのか。


疑問だらけのあたしが一人ポカーンとおいてけぼりくらってると、
スグルさんがあたしに視線を向けた。



「あー…ごめん。この人は『シズ』。俺のイトコ。」

「シズでーす。よろしくっ。」

すごく明るいシズさん。



「アカリです。よろしく…。」

緊張して、微妙なテンションのあたし…。






今の会話で彼女の名前とスグルさんのイトコだということはわかったけど、まだ疑問は残ってる。

肝心の『なんのためにここにきたのか』が全くわかんない。




…まさか期間限定カノジョを馬鹿にするためにここに連れてきたの…?!









「シズ、髪切ってあげて。切りながら話すから。」

「りょーかいっ。」


スグルさんのその言葉で、あたしは髪を切るために連れて来られたことを理解する。




大きな鏡がある部屋だとは思っていたけど、ここ美容室だったんだ…。




あたしは部屋を改めて見回してみた。


一見すると、フローリングの普通の部屋。
真ん中に椅子が2つあって、その前に大きな鏡が2つ。
部屋の奥には椅子とテーブルと雑誌が並んだ本棚。
ところどころに観葉植物が置いてある。
シャンプー台がないので洗髪は別の部屋でするのかもしれない。
入口とは別のドアがいくつか見える。






「アカリちゃんにはセミが似合うよね。」

「うん。俺もそう思ってた。」


聞こえてくる二人の会話。



セミ!?
虫か!虫なのか!?
あたしはセミより、トンボの方が好きなんだけど…!




「アカリちゃん、ロングよりセミの方が似合うと思うから切っちゃうね。
イメージかなりかわると思うよ。」






なるほど。
そっちのセミか。



シズさんの言葉で、あたしに似合う『セミ』というのは、
『虫』ではなく『髪の長さ』の話だとわかってホッとした。



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あきゅろす。
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