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あたし限定ホストクラブ1【85ページ完結】
ホストクラブ


お金だけもらってトンズラするしか…!







ホストクラブに行くのがこわいからって、
一瞬でもそんなことを考えたあたしは確かに悪かった。





けど。


何も、お店の扉の真ん前まで首根っこ引っつかんでいくことはないと思う。


結局あたしは、逃げる隙なんてあるわけもなくママの言う通りにホストクラブに連れて行かれた。







「アカリはちゃんとすりゃかわいいんだから、自信持ちなさい。」


自信に満ちたママの言葉と笑顔に、あたしは少しだけ勇気をもらう。

ちょっとがんばってみようかなって気持ちにさせてくれる。

あたしだってやれば出来るかもしれない。
ママの子供なんだから。




「んじゃ、がんばって。」

にっこり笑ってあたしを励まし、踵を返したママ。




その軽いあしどりで去っていくママの後ろ姿を見て、あたしは思った。





あれは今から飲みに行って明日まで帰らねぇ気だな…と。











ソローッとお店の扉を開けて中をうかがうと、店の中は薄暗くて静か。

まだ時間が早いからかもしれない。



なんだかドロボーのような気分になったあたしは、小さな声で

「…こんばんはー…?」

と言いながらソロリと店内に入り扉を閉めた。




瞬間。




「こんばんは。」

真横からえらく渋い声が聞こえて、あたしはビクッと跳びはねた。



おそるおそる声がした方に目をやると、
あたしより一回りくらい年上で、落ち着いた感じの大柄な男の人がニッコリ笑って立っていた。





「アカリちゃん?」

「…、…はい。」

あたしの名前を知ってるらしい。



なんで知ってるの?!
って…聞くまでもなくわかる。




「ナツコさんから話は聞いてるからね。」

大柄な男の人は穏やかな雰囲気で何度か頷き、奥に向かって少し大きな声を出した。



「おーい、ユウ。お客様だよ。」

「はーい。」



返事と共に奥から出てきたのは、栗色の髪の男の子。

あたしと同い年くらいに見える。
かっこいいというか、かわいいというか…、
モテるであろうタイプ。






「ユウです。よろしく。」

屈託のない笑顔。


これが俗に言う『営業スマイル』ってやつ?






大柄な男の人があたしに軽く頭を下げて奥に引っ込んだのを横目で見送ったユウさんは、声をひそめ、


「外、出ようか。」

ニコッと笑って扉を指した。


「へ?」


てっきりママは『ホストクラブを堪能しろ』って言ってたんだと思っていたんだけど…。




状況が飲み込めずに、キョトンとしているあたしに。

「いいから、いいから。」


どこか楽しそうなユウさんに押し出されるように、あたしは店外に出た。




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あきゅろす。
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