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狙い通り飛んで行った小枝はナルトが足を掛けようとした丁度その場所、木と足裏の間に挟まった。うまく着地できず案の定バランスを崩したナルトを身体が宙に浮いたところで捕まえた。

「世話掛けさすんじゃねーよ」

地面に降ろすと、さすがに疲れたのかナルトは木に凭れかかった。さっきの今でそんなすぐに変われないオレは、また憎まれ口を叩いてしまった。すると、ナルトもナルトで反発して、突っかかってくる。

「頼んでない」
「いいから帰るぞ」
「ひとりで帰る」
「帰れんのか」
「バカにすんじゃねーってばよ!」

さっきから見向きもしなかった顔がキッと睨みつけてくる。違う。こんなことがしたいんじゃない。これじゃダメだ。ダメなんだ、そう思いつつ、出てくる言葉は変わらない。それどころか、次々と飛び出してくるからどうしようもない。

「どうだか。オマエのことだから、迷子になって帰れなくなったとか言い出すんだろ」
「誰が迷子になるかってんだ」
「事実を言っただけだろ」
「言っとくけどオレは迷子になったことなんてねーってばよ」
「フン。なら、こないだの山菜摘みの時、時間になっても帰ってこなかったのは誰だよ」
「あ、あれは、迷子になったんじゃなくて!その……とにかく!オレは迷ってねーってば!」

語気が強くなっていくのと同時に息が上がっていくのがわかる。いつの間にかナルトは立ちあがり、今にも飛びかかってきそうだった。

「だいたいなぁ、人の話し聞かないからそうなるんだろ」
「聞いてるってばよ!」
「溺れたのだって、任務前に気をつけろってカカシが言ってただろうが」
「言ってねぇ!」
「やっぱり聞いてなかったんじゃねぇか!できそこないの頭でよく思い出してみろ!奥は深いから注意しろって言ってただろ!」
「はぁ?そんなのいつ言っ、て……っ!」
「図星かよ。……そんなんで、よく火影になるだなんて言えたもんだな。前々からバカだとは思ってたが、ここまでバカだとは思ってなかったぜ。バカの極みってオマエみたいなやつのことをいうんだ、な」

思いつくまま吐き散らかしているうちに顔を伏せたナルトを見て、もやもやとした何かが湧いてくる。これは、そう。罪悪感。何をやってるんだ、ナルトを傷つけて。嫌いなわけでも、嫌われたいわけでも、ない。沈黙が痛い。本当に好き、なら…オレがすべきことは……。

「あーいや、そうじゃ、ない」

上手く言えなくて言葉が詰まる。急に語調を変えたオレにピクリとナルトが反応したのがわかるが、ナルトを見て伝えられない。そこら辺に生えてる、背の低い、ちんちくりんな野草に向かって話しかける。

「なんつーかその……、溺れた時、心配した」
「!」
「無事で、よかった」

 言ってしまえば、少し楽になった気がした。これなら、あと少し言える気がする。今度は、ナルトのことを向きながら。

「キツイこと言って――」
「オ、オレも!」

すると、ガバリと顔を上げたナルトと目がカチ合う。

「オレも!突き飛ばして、悪かったってばよ……ッ!」

顔は再び赤みを取り戻し瞳も涙を溜めていたが、先ほどよりもしっかりとオレを見つめていた。

「ホントは嬉しかったんだ。でも、素直になれなくて……さっきも。だから――」

そう、だったのか。なんだか拍子抜けした。胸のつかえが取れたような、そんな安堵感が胸に広がった。すると自然と笑みがこぼれて、ナルトを真っ直ぐ、真っ直ぐな気持ちで見ることができた。ナルトも、それを感じたのか、ニシシといつものようなイタズラな笑みを浮かべて、笑っていた。

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