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黒猫がやって来た
男二人で食べる年越し蕎麦なんて味気ないものだ。

テレビに流れる、今年流行ったJ-POPやら演歌やら名前も知らないアイドルした曲が蕎麦を啜る音と混ざって、なんとも言えないハーモニーを奏でるだけだった。

それでも、サスケと一緒に二年参り行って、おみくじ引いて、甘酒飲んで、焼きスルメ食べられただけで、オレは、すごく、すごくすごく嬉しかった。

幸せだった。

2012年、冬。
年の瀬、参拝。

サスケは一体神様に、何をお願いしたのだろうか。

オレは、

オレは……。





神様、どうか…

サスケと……

いや、

サスケが、幸せになってくれれば、それで。

それだけで……。





そうして、サスケとはそのまま別れた。

迎えたのは受験の年。

もしかしたら、サスケは1年早い合格祈願でもしていたのかもしれない。

もともとできる方だったけれど、そこからさらに猛然と勉強し、オレなんかには遠く遥か及ばない、超ウルトラスーパーレベルの高い大学に進学した。

方やオレは手に職を付けようと専門学校に滑り込んだ。

どんなに離れても、オレ、サスケの幸せを願ってるからな。

サスケ。





合格から2年後。

専門を無事卒業したオレは、念願だった一人暮らしを始めた。

一人暮らしに慣れ始めた頃、ある日家に帰ると1匹の黒猫が玄関の前でニャアと鳴いていた。

やっちゃいけないと分かっていても、なんだかとても切なそうに鳴くもんだから、昨日の夕飯のねこまんまをやってしまった。

それ以来、その黒猫は頻繁にやってくるようになって、エサを上げるまで帰ろうとしなかった。

呼ぶのに不便だから名前を考えたけれど、どうにもこうにもアイツの名前しか出てこないのが悔しくて、サチコって呼ぶことにした。

サチコ、さっちゃんだ。

オスだったらごめんな。
でも、オスでもオマエは可愛いから、サチコって呼ばれても名前負けしてないってばよ。

サチコ、サスケは今何してると思う?

勉強、頑張ってるのかな。
また、女作って泣かされてないといいな。
イタチ兄ちゃんとは上手くやってるかな。

サチコ、オレ、サスケに会いたいってばよ……。



食べ滓のついた手をサチコが舐めてくれる。

ザラザラとした感触がくすぐったく感じた。

サスケとはもう、2年以上も会っていなかった。

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あきゅろす。
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