[携帯モード] [URL送信]
黒猫の鈴が鳴り止む
すっかり日も沈んで、星屑の欠片しかオレたちを照らすものはない。

「なぁ、サスケ。」
「なんだよ。」
「そのストラップ外せよ。」
「……なんでだよ。」
「サスケくんの一番から、お、ね、が、い。」
「キモいし理由になってねーし。」

と言いつつも外してくれるサスケは優しい。チャリチャリ鳴る音は、いつもと違って鈍く響いた。

「彼女さんに選んでもらったんだろ?」
「まぁ、な。」
「やっぱな。サスケの趣味に合わねーと思った。」
「ギャップもえだって言ってたぞ。」
「彼女が?」
「ああ。」

そりゃサスケのことよく分かってるわ、とどこか納得したけど、やっぱりオレの目のつくとこに、置いて欲しくなかった。

彼女には悪いけど、これがオレにできる最高のワガママだから。

外された黒猫のストラップは行き場をなくし、仕方ないからと言って鞄のファスナーへと移された。

取ってもらった意味ないなと思ったけれど、電話中に鈴の音が鳴らなくなるだけマシかなと思った。

「ケータイには一生ストラップつけないって約束しろってば。」
「意味わかんねーよ。」
「な?」

と甘えるオレに、「全然可愛くねーよ」とサスケは顔を顰めた。

そんな顔されても今日は痛くも痒くも全然ない。

ヘラヘラ笑うオレに「じゃあ、オマエも一生つけるなよ」とサスケは言い「がってん承知ノスケだってばよ!」とオレは力こぶを作っておどけた。

それから、ポケットからスライド式のオレンジ携帯を取り出し、長年の相棒だったガマちゃんストラップを外す。

「まだそんなのつけてたのか。」
「なんか愛着わいちゃって。」

と笑うそれは、小学生の頃、サスケが夏休みの旅行のお土産にくれたものだった。

外されたガマちゃんはどこか寂しげだったけれど、約束だから仕方ない。

「ノーストラップって、ある意味お揃いだな。」

なんて言ったオレに、ウスラトンカチと返すサスケ。

外したストラップはなくさないよう、すぐに胸ポケットに締まった。

もう二度とつけることのなくなったストラップは家にでも飾ろうかな。

そう、思った。

[*前へ][次へ#]
[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!