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少し休んだサスケは、再び野山を分け入り奥へ奥へと進んでいく。

するとどうだろう、ふと道が開けて、錆びれた神社にたどり着いた。

そこでは2体お稲荷様が来訪者を出迎えており、これはいい塩梅だと思ったサスケは、村から持ってきた油揚げを石畳の真ん中――丁度お稲荷様とお稲荷様の間――に置く。そして、ちょっとした罠を仕掛けるとサスケは物陰に隠れ、九尾狐が出てくるのを待ったのだった。

これで引っ掛かったら相当バカな神様だな。

そうは思ってもやらないことには始まらない。少ししてダメだったら作戦を変えよう。そう思っていた矢先のことだった。

「うまそーなあぶらげだってばよ!」

いかにも間抜けそうな声がサスケの耳に飛び込んできた。そして、

「うぎゃあ!これは一体なんだってばよ!!」

と、これまた間抜けた声がしたので、サスケは急いで物陰から飛び出した。







「このッ!……このッ!!誰かここから出せってばよッ!!」

どうやらおバカで間抜けらしいこの神様は確かに九つの尾を持つ狐であることは間違い無さそうだった。

仕掛けた笊から尻尾だけ出ていて、本体はその中にすっぽりと覆われてしまっていた。

「お前が九尾狐だな?」

「んあ!?そこに誰かいるのかってばよ?早くオレをここから出せってばよ!!」

生意気な糞餓鬼。

それがサスケの第一印象だった。笊にすっぽりと入ってしまうほどの小さな神様は人の子の姿をしていて、違いと言えば、狐の耳と尻尾が生えていると言うだけで、そこらにいる小便小僧と何も代わらないように見えた。

喚く神様を笊から出してやるとフンフンと鼻息を荒げ、いかにもわたしは不機嫌ですと自己主張していた。

「糞餓鬼とはなんだってばよ人間ごときが!オレは九尾の狐様だぞ!!」

「……お前、心が読めるのか。」

驚いて聞き返して見たものの、欲しい返事はない。

「キー!生意気なのはどっちだってばよ。神様に向かってお前とは何事だってばよ。親からどういう教育受けてきたん……」

しかし、どうやら本当に心が読めるらしい神様は、そう途中まで言いかけると何かに気づいたようにハッと驚き、言葉尻を曖昧にした。けれどもすぐに

「オレのせーじゃねぇってばよ。」

と言い訳し、口をつぐんだ。

オレには両親がいなかった。
オレの記憶が定着する頃にはもう死んでいて、気づいた時には兄と2人、細々とした生活を送っていた。

親と言う言葉に不意に浮かんだ記憶に、この小さな神様はそこまで読み取ってしまったらしい。

不憫な子だ。

「もう、読めねーから安心しろってば。」

耳についていた飾りを外しながらそう言った神様は、不憫と思った言葉にもう反応を返さなかった。

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あきゅろす。
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