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「聞こえない。」

サイはオレを求めていた。

「聞こえないよ。」

サイはオレの心も欲しがっていた。

「何をどうして欲しいか、ちゃんと言わないとわからない。」

読めないと思っていた本心は、そこにあった。

「サイの…×××が欲しいってばよ……。」

オレは気づいていたのかもしれない。けれど、この関係を切りたくなくて、サイの心を無視して自己満足のためだけに繋がっていたんだ。

「どこに?」

ヤメロなんて言えなかった。

「……。」

オレはサイの気持ちを踏みにじっていたのだから。

「どこにだって聞いてるんだけど。」

「こ、ここ。」

「……もういい。」

「ゴメン」とオレが謝るとサイは悲しい顔をして慣らしてもないそこに容赦なく押し入った。

「痛い……。」

「……。」

「痛いよ、サイ……。」

濡れてもいないそこは擦れてヒリヒリするだけだった。どれだけ抜き差ししようともそこは永遠に入れるために出来てはいないのだ。

「痛いって…」

「本当に痛いのはボクの方だ。」

再び無機質な痛みを訴えればサイは涙を一粒落としていた。落ちた雫はオレの頬に舞い降りて、一筋の川を作った。

「サイ……。」

「どれだけ君を抱いても、君はボクのものにはならない。そうなんでしょ。」

「サイ。」

オレは名前を呼ぶことしかできない。サイは自身をズルリと引き抜いた。

「君にとってボクは当て馬で、性欲処理のための存在なんでしょ。」

「そんなこと……!」

「ほら、否定しきれない。」

否定できないのは当然だった。オレとサイは身体だけだと思っていたからだ。でも、本当は違った。少しだけ、違っていたんだ。


「……でも、オレにはサイが必要なんだってばよ!」

「ウソ。」

「ウソじゃないってばよ!」

オレが真実を訴えるとサイは視線を反らした。

「オレ、サイがいないと怖くて、不安で、どうしようもなくなるんだ。」

「本当に?」

「もちろん……!」

「……じゃあ、サスケは?」

「サスケ……。」

その答えはとても難しかった。オレにとって、サスケとサイはどちらも大切だった。ただ、サスケが一番なだけで、サイもオレの重要な一部であることに違いなかった。

それだけだった。

「うまく、言えないってばよ……。確かにオレにとっちゃサスケが一番だけど、サイもオレにとって必要なんだ。サイがいてくれなきゃ、オレは困るんだ。」

「ナルト……。」

思わず抱きつくとサイは優しく名前を呼んでくれた。

「お願いだ、サイ。オレのそばにいてくれってばよ。」

オレの心からの願いは届いたのだろうか。

サイはオレをぎゅうと抱き締めるとさっと身なりを整えて、

「また、ご贔屓に。」

と笑って帰っていった。

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あきゅろす。
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