愛の試練2
サクラちゃんとの演習が終わり、次はサスケとだった。
サスケとはあれ以来まともに話してないからすごくやりにくい。
やりにくいどころか気まずくて仕方ない。
今のところ順調だけど、この先何があるかわからない。お化けもそうだけど、サスケと一緒なんて、本当に気が滅入りそうだ。
「さっさと行くぞ。」
「……わかってるってば。」
途中で道が途絶え、ガサゴソ草むらを分け入ってと道なき道を行った。こんな時間なのに蝶々が飛んでいた。
蝶々はヒラリと舞うと、サスケの頭上を越えていった。
本当なら、サスケと一緒であることが嬉しいはずなのに、オレのついた下らない嘘で前にも後ろにも引けないオレがバカらしかった。
好きだけど、どうしようもないじゃないか。オレは男で、サスケも男。どうせなら、嫌われてしまえば、って思ったけど、ダメだった。
オレは知ってしまったんだ。
人といる喜びを。
人といる安らぎを。
もう、戻れなかった。
どうやって独りでいたんだろう。
どうやって、独りでいられたんだろう。
さっきから空いている微妙な距離がもどかしかった。
声をかけようにもきっかけも何もないんだ。
……何も。
『なぁ。』
『あぁ…。』
サスケもそれは同じだったらしい。振り返ったサスケは辺りを見渡すと、何か異変がないか観察した。
おかしかった。何もなさすぎなんだ。サクラちゃんと一緒に行ったときは、虫に虎に巨大蛇、あらゆるトラップに巻き込まれて四苦八苦したって言うのに、ここには何もなさすぎる。
オレもあちこち見てみたが夜の闇に、そう何かが見えるものでもない。
フと何かの気配を感じ、そちらの方を向くと、サスケの後方だった。とてつもない何かが猛烈に迫ってきていた。
『後ろ……ッ!』
一足遅かった。サスケが反応した途端、得も知らぬ闇に飲み込まれ消えてしまった。
存在し続ける気配。
『コソコソしてねぇで出てこいってば!』
叫んでも自分の声が木霊するだけで何もかえってこない。気配はするのに実体は見えない。身震いがした。
『くっそ……サスケェッ!いるなら返事しろってば……!』
ないと分かって声をあげるのはツラかった。誰も助けてはくれない。溢れそうな涙を堪え、オレは苦無を握った。目を閉じ、動き続ける気配だけを一身に辿り狙いを定めた。
『そこだ……ッ!』
振り向き様に苦無を突きつけた。確かに感じた手応えに目を開いた。そこにいたのは
『あ……ッ。』
サスケだった。
口から血を吐き、倒れ込むサスケ。オレの刺した苦無は胸に突き刺さり、苦しそうに横たわった。
『なん……ッ。』
慌てたオレが苦無を抜くと、止めどなく血が流れ落ちた。止めても止めても止まらない血にオレは必死だった。
『サスケェ!死ぬなよ!!』
オレはお前に言わなきゃならねぇことがいっぱいあるんだってばよ……ッ!
『なぁ、頼むから、死ぬな。』
サスケ…。
『サスケェッ!!!』
「ウルセェ!」
ガツンと頭に衝撃が走った。
「イッテー!!」
吃驚して飛び起きると、少し遅れて痛みを感じた。ふと横を見ると、サスケがオレを心配そうに覗いてた。
「へ……。」
「ようやく気がついたか。」
辺りを見渡すと、洞窟にいることが分かったが、事態を飲み込めずにいた。そんなサスケが見かねて、
「オマエ、幻術にかかってたんだよ……。」
と説明した。
「幻、術……。」
そうだ。とサスケは言うと、通ってきた草むらの中に大量の蝶々が潜んでいたらしい。その蝶々のリンプンには幻術効果があり、サスケが気づいた時にはオレはすっかり幻術の中、だったそうだ。
「オマエ……。」
「何だってばよ。」
「いや……。どこか痛みはないか。」
含みを持った質問ではあったが、さっき殴られたところだと返すと、ならもう大丈夫だなと言って立ち上がった。
「サスケは……!」
そそくさとその場を離れようとするサスケのズボンの裾を掴むと、オレは聞いた。
「サスケは、どこも怪我してないのか……?」
「ああ…。」
不思議そうにオレを見るサスケに、ホッと一安心した。
どうやら『アレ』は、本当に幻術だったらしい。なんともなさそうなサスケに、涙が溢れそうになった。
「サスケェ。」
「何だよ。」
「こないだのこと、悪かったってばよ。」
そう言うと、サスケは表情を硬くした。そうだよな。それくらいのことを言ったし、言われたんだから、当然だよな……。
でも、今言わなきゃ一生言えない気がする。オレたちは、いつ死ぬか分からないんだ。二度と、会えなくなってしまうことだってあり得るんだ……。
ここは幻術の中じゃない。
現実だ。
オレは、決心した。
「あれ、全部ウソだから。」
「……。」
この際だから、全部白状してやろうと思った。オレの気持ちも、全部全部。
オレは×××が好きじゃないってこと。
×××はちゃんと友達として見ていること。
サスケと一緒にいられて嬉しかったこと。
でも、サスケに彼女ができたらどうしようって思ってたこと。
だったら、サスケに嫌われてしまおうと思ったこと。
それから――
ずっと、サスケと一緒にいたいって思ってたこと。
ポツリポツリと話し出すオレに、サスケはただ黙って聞いていた。
ただ、やっぱりどうしても好きだってことは言えなくて、そっと心の中にしまっておいた。
「それだけか。」
全部言い終わると、サスケはオレをじっと見て言った。何を考えてるのか分からない表情に、オレは少し怯えながら、それだけだってばよ。と伝えた。
サスケは、そうか。と頷くと、オレは、と言って話し出した。
今度はサスケの番だった。
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