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そこにいる当たり前の日常を意図も簡単にブチ壊すサスケ
「サスケェ。」

「なんだ。」

「オレ、好き、なのかも……。」

「え……。」

仲良くはない。ただ、顔を合わせればケンカをしていた頃に比べれば、幾分かましな仲になったのではないだろうか。任務のない日は一緒に修行したり、雨が降った日はどちらかの家に邪魔するようになった。

今日は雨で、夏が近づいてるせいでジメジメと蒸し暑い日が続いていた。

朝食を済ませた頃、ドアを叩く音がして、開くと案の定ナルトが立っていて、前借りてた本返しにきたと言って家に上がった。そして、ついでに巻物読ませてくれって言って、うんともすんとも言う前に棚から2、3本取り出すと寝転がりながら読み出した。

汚くするなよ、と忠告すると、わかったってばよって返事が返ってきて、ナルトは巻物に没頭した。

やることを済ませてしまうとオレも暇になり、ナルトのそばにどかりと座ると、一緒に巻物を読み出した。

気がつくとお昼をとっくに回っていて、昼飯どうする、とナルトに問えば、

「チャーハン食いたいってばよ。」

と言った。

作ってテーブルに置くと、ナルトはスプーンを用意して、牛乳を注いで待っていた。特に話もなく玉子の絡んだご飯をつついているとナルトは言った。オレを見つめて、言った。

『好きなのかも。』

と。

食べる途中だったオレは、口が空いたまま塞がらなかった。

確かに仲が悪いわけではない。かといって良いかと言えばそういうわけでもないと思う。好きとか嫌いとか、そういう感情が生まれることなど想像もしてなかったオレは、ナルトの告白をうまく飲み込めないでいた。

「それはつまり…どういうことだ。」

「そのままの意味だってばよ。」

サスケバカ?と聞き返されたら、オレは唐突過ぎてわかんねぇよ。ちゃんと1から説明しろ。と言うとナルトは止まっていたスプーンを置くと、牛乳をゴクリと飲んだ。

白くついた髭をふくと笑わねぇ?って聞いてきたので、言わなきゃわかんねぇよ。と言い返した。

ナルトは言った。


さっき巻物読みながらずっと考えてたんだけどさ、オレってば、ずっと×××のことが頭から離れないんだってばよ。だっておかしいだろ?巻物読んでるのに、×××は今何してるんだろうなぁとか、もしかしたら任務かなぁとか、怪我してなきゃいいなぁとか、もし怪我してたら誰かに手当てしてもらうんだよなぁ…×××は誰かに触られるのか、そんなのいやだなぁ。オレが手当てしてあげるのになぁ……とか、さ。そんなのおかしいだろ。オレ、今サスケん家で巻物読んでるんだよ。チャーハン食ってるんだってばよ。それなのに×××のことばっかり考えて……。だから、オレってばもしかして×××のことが好……


オレはその言葉を最後まで聞きたくなくって途中でわかった。って言ってナルトの声を掻き消した。

「お前の言いたいことはわかった。」

語気が強くなってしまったのはオレの予想外のことだった。

まるで、声がオレの言うことをきかずに勝手に動いてしまったみたいにオレはペラペラと喋りだした。

その言葉は、ナルトをただ傷つけるものにしかならなくて、変に知恵のついた唇は、心ない言葉を平気で放った。

こんなこと言いたいわけじゃないのに。

こんなこと、言ったってなんの得にもなりはしないのに。

止まらなかった。

みるみるうちにナルトの顔が歪んでいく。

空になったコップに乾いた牛乳がこびりついて汚ならしかった。

おかしいとは思ったんだ。

ナルトが自分から本を返しにくるなんて。何時間もナルトが巻物を読み続けられるはずはないのにって。昼飯にラーメンのリクエストがないなんて。

始めっからおかしかったんだ。

それなのに、オレはその変化をさして気に止めることもなくただの日常として通過した。

まるで、ナルトがそこにいることが当然みたいに思えていて。

ナルトと一緒に過ごす日々が当たり前になっていて、そんな小さな変化なんて、気にしなくなっていたんだ。

だから、必然だったんだ。

オレが、ナルトに惚れたなんて。

ナルトから放たれた言葉はオレをひたすら苛んだ。

痛くて痛くて、胸が千切れそうだった。

目の前にいるのに、こんなにすぐそばにいるのに、遠く彼方、地平線の果てにいるみたいに感じて苦しかった。

ナルトを傷つけたいわけじゃなかった。

ただ、それ以外の言葉をオレは知らなくて、ナルトを繋ぎ止めるのに必死になっていた。

行かないでくれ。
離れないでくれ。
置いていかないでくれ。
もう、これ以上ひとりにしないでくれ……。

パタリ。

オレの口が大人しくなったのは、ナルトの瞳から大きな雫が落ちた時だった。

「こんなこと言って悪かったな、サスケ。」

もう、オレ帰るよ。

ナルトがスプーンを置いて立ち上がるのをオレは黙って見ていた。口の端が上がったまま動かなかった。

玄関の扉が閉まる音がして、オレはナルトがいなくなったのを知った。

そして、二度とこの家にはこないのだろうなとも思った。

汗が止まらなかった。



ナルトが注いでくれた牛乳を飲んだ。
ぬるくて吐き気がした。

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あきゅろす。
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