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「サスケェ。」

「なんだ。」

下らないことばかりに働く脳ミソを恨んだ。無駄に動いた心を落ち着かせるために寝転がると、コートと一緒にかかっていた赤いマフラーが目についた。

「サスケって赤とか好きだったけ。」

「ああ、それか。前使ってたのがだいぶ傷んでいたからな。たまたま安かっただけだ。」

オレの視線に気づいたサスケは、質問の意図を汲み取ってくれた。普段紺とか黒しか身につけないサスケにしては珍しい色だなと思っていた。

「気になるか。」

しばらく黙って見つめていることを不思議に感じたのか、サスケが不機嫌そうな顔をした。

「んーん。いいなぁと思って。」

紺や黒に滲むようにして赤を身につけるサスケに違和感は何も感じなかった。むしろ、サスケが身につけている方が自然で、ずっと前から持っていたみたいに感じた。

「なぁなぁ。」

立ち上がってその真っ赤なマフラーを巻いてみる。

「似合う?」

「…煩いな。」

オレとマフラーの相性をそう評価したサスケは目を細めてこたつへ潜った。

「お前は金髪で青目だから、赤が入ると、な。」

似合わないことはないけど。とさりげなくフォローしてくれるところが嬉しい。

だから、調子に乗ってマフラーを頭にかぶって髪の毛みたいにセッティングした。そして、サスケの隣に座って

「赤い血潮のハバネロだってばよ。」

って言ってみた。そうすると、案の定「なんだそりゃ」と言ったサスケに、母ちゃんの昔の異名だと伝えると、感心したように頷いた。

「オレの髪の毛が母ちゃん似だったら、こんなだったかもな!」

「ふん。お前はどんだけ目立てば気がすむんだ。」

「サスケに認めてもらえるまで。」って言葉は飲み込んだ。その代わりに、はにかんで笑うとオレは酒も飲んでないのにサスケに盛大に甘えたくなった。

甘えたくなったけど、どうすればいいか分からない。

抱きつくのは恥ずかしいし、かと言って正直に「甘えたい」と言うのもなんかイヤだ。

どうしよう……。







ナルトは笑うとじっとオレを見つめたまま喋らなくなってしまった。

あまりにも見つめてくるものだから、どうしたらいいか分からず思わず頭を撫でてしまった。

金髪の髪は思ったよりふわふわと柔らかく、存外気持ち良かった。

ナルトは最初目を丸くして驚いたが、すぐにふにゃりと顔を崩して「サスケェー!」と叫ぶと頭から突っ込んできた。

頭をぐりぐりと腹に擦り付けるさまに何歳児だと思いつつ、手はナルトを抱きしめてたままだった。

内臓が出なくて良かった。







何々?オレたちってば以心伝心!?サスケってば大好きー!って思ったことがそのまま行動にでちまったってばよ。

サスケのお腹はあったかくていい気持ちになった。

伏せていた顔を横にして「サスケェ」って呼ぶと、「なんだよ」ってぶっきらぼうだけど優しく言葉を返してくれた。

この赤いマフラーが運命の糸になってくれないかなって、ちょっとロマンチックなこと考えた。







「『このマフラーが運命の人連れてきてくれないかな』って言って?」

「は。」

またコイツは突発的だな。先が読めない。いからいいからと膝の上で暴れられて正直痛い。

色んな意味で、痛い。

そんなこっぱずかしいこと、普段だったら言えるわけないんだけど、言うまでコイツはウルサイってことはもう嫌ってほど知ってる。

それだけの理由だ。

ナルトが望む台詞をすぐに言ったのは。

もちろん、心を込めずに棒読みした。







「このマフラーが運命の人を連れてきたらいいのに。」

頭にかかったままの赤いマフラーを掴みながら言ってくれるのは雰囲気出てありがたいけど、全く心が感じられない!ちょっとは演じろっていうんだ。

けど、イケメンって何しても様になるからズルい。

ただマフラーを握っているだけなのに、少し憂いを帯びたみたいな顔してオレを見つめてる。みたいに見える。

心を奪われそうになりながら、しかし、いつもよりも早い降参に喜びを噛み締めて、オレは、言いたかった台詞をうずまきナルト渾身の格好良さをかき集めて解き放つ。

「そんなの、目の前にいるってばよ……。」

最後に相手の目を見て微笑むのは必須事項だ。







「ときめいた!?」

一瞬だった。ナルトが普段ではあり得ないほどの冷静さを讃えたのは。これが、いつも三枚目のヤツが格好つけた時のギャップってやつか。

少なからず息を飲んだオレは黙って頷いた。

すると、「そっか。」と言ってへへッと笑う。

「お前も黙れば格好つくのな。」

「なんだよー。オレはいつでもイケメンだってばよ。」

「よくいう。」

オレはナルトに手を伸ばした。







「うわっ。」

急に視界を閉ざされた。

オレがうろたえるとサスケは「そろそろ寝ようぜ」と言ってオレの瞼を優しく閉じた。思わず、

「何言ってるんだってばよ!夜はまだまだこれからだって。」

とサスケの手を退かすと、サスケが笑っていたのでなんだか尻すぼんでしまった。

「早く寝ねぇとサンタ来ないぜ?」

「サスケは本当にイベント好きなんだな。」

「好きで何が悪い。」

まるでオレが正義だと言わんがばかりのサスケの態度に呆れてしまった。

そんなサスケも好きなんだけど。







「じゃあ、寝るぞ。」

「えー。」

ふて腐れるナルトをよそに早々と立ち上がったオレは布団と枕を持つと、すぐに電気を消してしまった。

「サスケェー何も見えねーってばよ!」

「今いくから待ってろ。」
駄々をこねるナルトに布団をかけてやると「サスケと一緒がいいってばよ」なんて甘えたこと言いやがってズボンの裾を掴んでオレを布団の中へと誘った。

一枚の布団に2人の人間が入ろうなんてあまりにも無謀すぎる計画に、仕方ないから布団を並べて隣に寝た。

「これで許せ、ナルト。」

といったら、

「ん。」

と言ってナルトはオレの布団に侵入してきた。

「狭めぇよ。」

「でも暖かいってば。」

顔を寄せて笑うナルトに、それ以上何も言えなかった。

「サンタってばオレの願い叶えてくれっと思う?」

さっきあれだけ文句を言ってたくせに、布団に入った途端急に大人しくなりやがって。それでも、希望に満ちた声で聞かれれば、

「いい子にしてたらな。」
と答えるのが妥当だろう。

「そっか。」

ナルトは1人納得したように頷くと、

「じゃあいい子にするってば、サスケ。」

「サスケ」と二回オレの名前を呼ぶとナルトは目を瞑るが早いか10分も経たないうちに眠りについてしまった。

そんなナルトの寝顔を見て、

「Merry Christmas.」

と思わずこぼれた。







好きで好きで仕方ない。

そんなキミには

とっておきのプレゼント。



目が覚めたら、届いているといい。

オレの気持ちと、

オレへの最高のプレゼント。















fin.

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