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ご馳走にケーキも揃ったところでオレたちはパーティーを開始した。

パーティーと言ってもダベりながらご飯食べて年末特番見るくらいだけど。

ケーキは、ふたりで買いに行った。でも、サスケは食べられないから、オレが食べたいのをいくつかバラ売りで買うことにした。

ちなみに、サスケが食べられそうなのも選んでみた。

少しでも口にしてくれればいい。こんな美味しいものが食べられないなんて、人生の半分は損してる!

ってなわけで家に帰ってケーキ並べると、オレたちは早速パーティーを始めた。
しかし、

「もう限界だってばよ。」

ピザとチキンを食べたところで満腹になり、大の字になって寝転んだ。サスケも満腹のようで天井を仰いでいた。しかし、

「ケーキはどうするんだよ。」

と、サスケはまだ手のつけられていない綺麗なままのケーキをあごで指すと「残しても食えないからさっさと片づけちまえ」と言ってオレを見下ろした。

「んなこと言ったってもう食えないってばよ。」

自分だけ満足して、後は任せた。これってどうなのよ?
だから、

「サスケが食べさせてくれたら食えるかも。」

なんて冗談で言ってみたら、

「…どれがいいんだよ。」

って。

マジか。







「じゃあそのイチゴの乗ったヤツ。」

「ショートか。」

「んーん、チョコの方。」

我が儘なヤツだ。

食わせろだなんて。

しかし、オレも買えって言った割りに食べられない手前、これくらいの我が儘聞いてやらないと申し訳ない。

つけてもらったプラスチック性のフォークをビニールから取り出すと、尖ったところを掬ってみた。

チョコレート色した生クリームにスポンジに、どれを取っても甘そうで、食べてもいないのに胸焼けしそうだ。

「ほら。」

「ん。」

目の前にフォークを差し出すと、ナルトは待ち構えたように口を開け、パクリとそれを飲み込んだ。

「旨いか」と聞くと、幸せそうな顔をして笑うもんだから、なぜだかホッとしてしまった。

口の中のものがなくなってしまうと、ナルトはまた「あー」と口を開けて次のケーキを待った。

またかよ。

コイツは餌付けられた犬か。







サスケにあーんしてもらえる日がくるなんて思っても見なかった。

これってちょっと恋人っぽくない?

喜びに浸りながら食べるケーキは格別だ。

サンタクロースにマジ感謝だってばよ……!

サスケが差し出すケーキは普段のケーキなんかよりもめちゃくちゃ旨い気がして、口中が幸せでいっぱいにだった。

サスケも食べて見ればいいのに。

そう思わずにいられなかった。







「サスケも食べて見れば?」

幸せそうにケーキ食ってたかと思えばいきなりこれか。

「甘いものはいい。」

「このケーキそんなに甘くないってばよ。」

「ビターチョコレート使ってるから、生クリームさえどけてちまえばそんなに甘くないってばよ」と説明されてもそう納得いくもんじゃない。

さっきまでパピヨンみたいに可愛らしい瞳をしていると思ったけれど、今じゃあそれが獰猛犬だ。

オレが困るのを嬉々として喜んでいるみたいにみえた。

悪魔。そう悪魔だ。

しかし、そんな悪魔も心根は優しいらしく、

「こんなに旨いのに、食べないなんて人生の半分は損してるってば……。」

なんて悲しげに言われたら、心が揺らぐだろ。

「……わかったよ。」

「!」

「ちょっとだけな。」

どうやらオレはナルトの悲しみに弱いらしいな。

フォークの先っちょに、ケーキをほんの少し乗せると、オレはそれを口に含んだ。







「そんなんじゃ全然食べたことにならないってばよ!」

サスケってばマジチキン!

いくら嫌いだからってそんな、フォークについたクリーム舐めました、みたいな量で食ったって言えるかよ。

「いや、十分食べただろ。旨かった。ごちそうさま。」

「バカ言ってんじゃねぇってば。ちょ、そのフォーク貸してみろ。」

そう言うや否やオレはサスケからプラスチックのフォークを奪い取ると、サスケがオレにくれた分と同じだけの量をすくってみせた。

もちろん、生クリームの部分は避けて。







やっぱりコイツは悪魔だ。

オレにはもう十分だっていうのにまだ食わせる気だ。

「あーん。」

嬉しそうにこちらにフォークを差し出すナルトはとても可愛いのだけれども、それとこれとは話が別だ。

生クリームを避けてくれた心遣いはありがたいが、甘いものを克服するつもりは毛頭ないので困り果ててしまった。

そうして耐えられず、顔をフイと横へ反らすと、ナルトはハッと気づいたようにショボくれて、「ワリぃ」と言ってうつむいてしまった。

頼むからそんな顔しないでくれよ。

オレは、自分の最大限の弱味を自覚しつつ、ナルトの腕を取ったのだった。







「うっわ。」

サスケに腕を掴まれた。

途端にぐいぐい迫るサスケの顔に目が離せなかった。

オレの腕を掴んだまま、オレがすくったケーキをパクりと口に入れてしまうと、スゴく微妙な顔をして呑み込んだ。

「どう?」

触れられた腕のしなやかさと熱さを感じながらも、自然を装って感想を聞いてみると

「思ったよりは甘くないな。」

と言いながら、強引に奪ったせいで口の周りについたケーキの粕をなめ取った。

覗いた真っ赤な舌に再びドギマギしてしまったオレは気を紛らわせるためにそれとなく会話を続けた。

「じゃあもう一口食べる?」

「いや、お前の方がいい。」

「は。」

耳がおかしくなったのか。

思わず開いた口が塞がらなかった。

いやいやいやいや、それはおかしいだろう。まだ付き合ってもいないのに、それはない。それはないどころか、サスケにはそんな感情微塵も存在しないと思っていた。それがまさかこんな展開になるなんて。まぁ、オレにとっちゃあ願ったり叶ったりなんだけど。ってちょっとまて。この場合だとオレが下になる流れじゃないか?オレは断然上希望だってばよ!

「サ、サスケ……オレってばまだ心の準備が……ッ!」

一回の瞬きの間に電撃みたいに走った妄想の果てにこぼれ落ちた言葉は、そうやってオレたちの関係を茶化すものにしかならなかった。

冗談みたいに両手を胸に当てて待つのは悲しみと安堵と絶望と期待に満ち溢れた空白の時間。

サスケの手がオレの頬に添えられた。







「いてッ!いててッ!そんなにひっぱらなくたって。」

「バッカ!オレが言いたかったのは、お前が食べてるのを見る方がいい。ってことだこのウスラトンカチッ。」

「いちいち勘違いしてるんじゃねぇッ!」と言って反対の頬っぺたも引っ張ると「わりぃわりぃ」と言って頭を掻いて笑った。

言葉を間違ったオレもオレだが、受け取る方もどうだろうか。

ナルトはフォークを置くと「やっぱ食べきれねぇってばよ」と言って再び寝転がった。

「…とりあえず冷蔵庫閉まっとくぞ。」

席を立ち残ってしまったケーキを持って立ち上がった。

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