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気のつかぬ春

名付けたかっただけなんだ。





このモヤモヤした気持ちが何なのか、分からなくてムカついた。

ムカついて、イラついて、訳もわからず当たり散らした。

いつもピリピリしてて、人と会うことにすら嫌気がさしていた。

それでも任務はサボるわけにはいかないから、逆に、もう、これでもかってくらい完璧にこなした。

やってやってやりまくって、

「しっかりしろッ!!」

遂に緊張の糸が途切れた。

オレは任務中に意識を失った。







目を開けると真っ白な天井がオレを出迎えた。

「あ、気づいた。」

声のする方に視線を向けると、サクラがせんせーと言ってどこかへ駆けて行くところだった。

とりあえず起き上がろうとしたら、何かに引っ張られた。見ると、突っ伏して寝こけている金髪頭にしかと手を握られていた。

思わずソレを振り払った。握られた手がなんだか、熱く感じてジンジンとした。ナルトはその衝撃で目が覚めたのかモゾりと動き出した。

「ん……。」

まだ覚醒仕切らない薄く開いた目の、涙の溜まったアオイ瞳。

「サス、ケ……。」

あまつ、掠れた声で名を呼ばれれば、動く唇に目が奪われる。

青く揺れる瞳と赤く濡れた唇。ふっくらとした頬に近づきたい衝動。ただの顔の一部分だというのになんだ、これは。なんだ。なんなんだ。

「ナ……」
「サスケ起きた〜?」

ガラリと戸を開け、遠慮なく入ってきた上忍は、

「過労だよ」

と言い放った。







「神経張り詰めすぎだよ。」
「もう少し、自分に優しくしてもいいんじゃない?」
「他人をもっと頼りなさい。」

わかってる。そんなことは。こういう所に世話になる度に聞かされてきた言葉。そんな慰めるだけの言葉はもう聞き飽きた。しかし、カカシはオレの肩にポンと手を乗せ、

「今日はゆっくり休め。」

とだけ言いって、何もせずあっさり帰ってしまった。

「え、ちょっ、カカシ先生!」

あまりにあっさりし過ぎていて、たまらずサクラが追いかけた。







「…行っちゃったってば。」
「……。」

呆気にとられて何も言えなかった。戸が閉まると急に静けさが増して耳が痛かった。取り残された部屋には、ふたりだけだった。

「サスケ……。」

ナルトがその静寂を破ったが、それもまた妙な雰囲気を漂わせ、なんともいたたまれなかった。

「…お前も帰れよ。」
「え。」
「なんだか天気も悪ぃし、そろそろ日も暮れるだろ。」

適当な言い訳だった。しかし、このいたたまれない空気を払拭するには十分だと思った。

「サスケ、オレ……。」

それに、さっきナルトに感じた違和感。惹き付けられる感覚。これ以上ナルトと一緒に居たら、オカシクなってしまいそうだった。

「いいから帰れよ。」

だから、ナルトの言葉を無理やり切った。一人にしてくれ。そう項垂れると、ナルトはそっと立ち上がり、こんなことを言ったんだ。

「後悔したくないからさ、」

……何が。オレが聞き返す間もなくナルトは続けた。

「サスケが無事で良かった。」

また来るから、と照れてはにかむヤツを見て、トクリと胸が高鳴った。

なんだそうだったのかと思った。





名付けたかっただけなんだ。
このモヤモヤとした気持ちに。





ソレは、
恋と言う名の、春の訪れ。
















fin.
‐‐‐‐‐
突発文再録&加筆修正

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あきゅろす。
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