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魔の手から抜け出し



今日は空がひどく青かった。
こんな綺麗な空の日は昔を思い出すから嫌い。

高い位置にある窓から視線を外した。頬杖をつく右腕を下ろして机に出した教科書をペラペラとめってみる。


ほうきを使った飛行や変身術はわくわくして楽しいけど、教科書を見て羽ペンでただひたすら文字を書くような授業は嫌いだ。



「随分と余裕だなミスヴィジャード。教科書は423ページを開けと言ったはずだが。」


そう例えば魔法薬学のように。

真上から降ってくる、オクターブ低くなったその言葉に反論もせず言われたページを開いた。
「これでいいんでしょ」そう目で訴えかけ、まだ何か言いたそうなスネイプが教卓へ戻るのを待つ。



「つまりこの薬草は…」


と、うんたらかんたら言いながら教科書を片手にまた教室を回りゆっくり教卓へ戻った。

魔法薬学と聞けば薬草を使った実験や、様々な色の薬品を思い浮かべるが、実験なんてそんなに頻繁には無い。


羊皮紙をちぎり丸めて、斜め右に座るプラチナブロンドのあいつに投げた。
紙は見事に命中してヤツが振り返る。



「なんだよ」


あくまで小さな声で、スネイプに聞こえないように言った。


「暇だな」

「そんなこと、この僕が知るか」

「一緒に抜け出さない?」

「バレるに決まってる」

「いい考えがある。」



マルフォイはいつも以上に胡散臭い顔をした。
いたずらに笑うハル。

彼らスリザリン特有の笑みにも見える。



「教授」

「451ページの図のように青く変色し」

「スネイプ教授」

「何だねヴィジャード。」



コイツはオンオフのスイッチを入れ換えるのが本当に上手いと思う。

普段はただの変態キノコの癖に、授業の時間になった途端"教授"へと変わる。
変態発言どころかハルは、かのハリーポッターの様に嫌みや難しい質問をぶつけられ、嫌われているようにも見えた。



「教授…、私…」

「ま、待ちたまえ。我輩にも心の準備というものが…」




たまに素がでるのが欠点だ。



「昨日怪我した足から血が出て来たので医務室に「いますぐ行け!」



その言葉を聞いた途端、マルフォイにチラリと視線を向け、どうだとばかりに軽く口端を上げた。



「マルフォイ、一人で歩けそうにないから、ついて来て。いいですよね、教授。」

「い、いや我輩が連れてハァハァハァ「行こうマルフォイ」



何故息が荒い。

お前は頭の方を見てもらいにいった方がいい、と頭の中で吐き捨てて傍に来たマルフォイの肩に腕を回した。

ここはやはり迫真の演技。
魔法で軽く血をにじませた右足を引きずりながら扉へ向かった。

横から、重い、なんて呟く声が聞こえたからわざと足を踏んでみる。
何も聞こえなくなった。




パタンと音を立てて扉が閉まると、教室にいる全員が扉を見つめたまま黙っていた。

前に振り向く勇気があるものはいない。




「マルフォイ、ハルの肩に手を…!!!」




びりびりと教科書が破れる音がした。





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あきゅろす。
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