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魔法学校のディナー



結局ホグワーツに通う事になったハル。
住む場所も帰る場所もないければ、食べるものさえない。

行く場所がないなら、ここにいればよい。そう言ってくれたダンブルドアの言葉を拒むはずがなかった。(それに無関係者には入れない城なんて、隠れ場所にもってこいだ!)

いつかお礼をせねば。
大広間の前で一人、城中を見て回ってきて少し疲れたハル。こちらに向かって来る人影を見付けた。

歩くたびに翻される黒いマント。まるでコウモリのように頭のてっぺんから足先まで黒ずくめな彼、スネイプだった。



「こんちは。昼間っから暑苦しいね。」

「貴様に言われたくないなミスヴィジャード。赤いずきんなど時代遅れですぞ?」


猫撫で声で嫌味なその言い方が気にくわない。それは向こうも同じだろう。

スネイプはハルを見下すように上から見下ろしていた。


「コレは私のトレードマーク。外せっていわれても外す気ないから。」


ホグワーツは只今夏休み。生徒どころか先生さえほとんどいない。

しんと静まり返った中、スネイプとハルは永遠と睨み合っていた。




夏休みは結局ただ暑いだけだった。(それでもずきんは取らなかったけど。)

ホグワーツに入学するにあたって必要な道具や教科書は全てダンブルドアが揃えてくれた。
杖と制服は、夏休みを終えて早めに帰ってきたマクゴナガル先生と一緒に買いに行った。


そして今日は新入生歓迎パーティー。
今までずっと殆ど人のいなかった大広間に沢山の生徒達が集まり、長いテーブルを囲んで座っている。

天井は魔法で美しい空が写しだされていた。


マクゴナガル先生を先頭に、ハルを含む新入生達が大広間に入場した。沸き上がる拍手。
柄にもなく緊張して、前を歩く男の子の足を踏んでしまった。



「君可愛いね。」

「あぁ、僕らの姫にピッタリだ。」

『双子の紳士なんてどう?』


そう言って声をかけられたのは、ボロボロの帽子にグリフィンドールと告げられた後だった。
長テーブルには目を見張るようなディナーが並べられていて、早く食べてくれとばかりに素晴らしく食欲をそそる香りを醸し出していた。
それを見て生唾を飲んだハルのはだけじゃない。ダンブルドアの合図とともに、皆一斉に手を伸ばした。

両脇に座った双子に気付いたのは、チキンを手に取った後だった。



「何あんた達。」

「見ての通り」

「君の」

『ナイトさ』

「チキンうま」



フッと笑った二人を見ようともしないハル。
チキンを頬張る頬が膨らんでいた。


「兄貴達、僕と同じ歳の子をナンパするのはやめてよ」


正面に座っていた男の子が口を挟んだ。

兄貴、という事は双子の弟だろうか。赤毛に点々とそばかすのある頬。
一目見れば分かる事だった。


「ごめんね、悪気はないんだ。」


二人に代わって申し訳なさそうに告げた彼。双子よりよっぽど大人だと思えた。


「いいよ、気にしてない」

「よかった。僕はロン・ウィーズリー。」

「私はハル・ヴィジャード。」



ハルはチキンを置くと、右手を伸ばした。チキンでベトベトになったその手を見、苦笑いしたロン。ナプキンで手を拭いて、テーブルの向こうへもう一度差し出す。



『よろしく』

二人で笑った。



「俺はフレット」

「俺はジョージ」

『ハル、握手を』

「チキンうま」



二人の声は届いていなかった。



新入生歓迎パーティーは無事終了し、一年生は監督生に連れられ寮へ向かった。

しかしその列には加わっていなかったハル。
彼女のポケットは空。何処かで杖を落としてしまったらしい。

大広間に戻って来るなり、座っていた場所を中心に探し回った。
もしかしてあの巨大なイカのいる湖に落としてしまったのだろうか。そうだとすれば探すのはまず不可能だ。



「おやおや、」


カツンカツン、と靴が石畳の床と擦れて乾いた音がする。

あいも変わらず聞けば聞くほど腹の立つ猫撫で声が耳をかすった。



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あきゅろす。
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