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短編集
悩みごと。
 オフィスの暖かい空気に触れるとほっとする。
 礼詩は早速スーツの上着を脱いだ。
 そして、それはそれは盛大に顔をしかめると脱いだばかりの上着を急いで身につける。
 ワイシャツの上から見てもわかるほど、乳首が赤くぷっくりと立ち上がっていた。そんな姿を人目に晒せるわけがない。
 御門の奴……。
 礼詩はまだ厳しい顔で、起動中のパソコンのモニターを見つめながら心中で恨めしげに呟いた。
 なぜか朝から乳首がひりひりと痛んだ。理由などわからないし、そんな場所が痛いと気にするのも恥ずかしい気がしてなるべく考えないようにしていたのだ。それでもシャツに擦れると、痛くてしかめっ面になってしまう。
 ここにきてようやく原因がわかった。
 あんなに赤く腫れているのは寒さのせいだが、そのくらいで痛いほど腫れるように敏感になったのは、毎日のように性交を求めてくる御門のせいだった。付き合うという話はしていないが、実質は恋人だ。
 仲が良いのか悪いのかわからない仲だが。
 御門は礼詩が拒んでも襲ってくるのだが、突っ込んでくるだけではなく丹念な愛撫で泣かせるだけ泣かせて満足することもある。
 そうやっていじくられるから、乳首が敏感になってしまったのだ。
 おまえのせいで乳首が敏感になって痛い!などと責めても喜ぶだけだろう。大体、そんなセリフを御門にぶつけるなんて恥ずかしい真似はできない。
 泣き寝入りするしかないのか……と、いまだ疼く乳首を気にしながら、モニターを睨みつけている礼詩を、上司が少し訝しげに見ていた。
 
 
 


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