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短編集
僕の愛

土曜日のまだ明るい学校からの帰り道。
僕の隣には幼なじみのトウコがいた。

「ねえねえ。こないだコウちゃん家の隣に引っ越してきた永瀬さんとこのタスケくんともう会った?」
「うん。」

会ったどころか、
僕はタスケに一目惚れした。
引っ越しの挨拶に親と一緒に来たタスケは姿勢正しく立ち、頭を下げる。
そして凛とした表情を崩さず、親同士の会話を聞いていた。

そんな彼から僕は眼が離せない。じいっと見ていたらその視線に気づいたタスケがこちらを向いて微笑んでくれた。

ドクン、と心臓が跳ねた。
優しげな眼をしたタスケに、僕はどうしても触りたくて握手で良いからと手を差し出してみる。


するとタスケは握手よりもいいものを、キスを僕の手にくれた。


それ以来、僕はタスケに夢中だ。






「タスケってすごい優しくて格好良くて、私大好きなの。」
トウコが少し浮かれ気味に言う。
「初めて会ったときに、ほっぺたにキスしてくれたの!すごく嬉しかった。今は毎日デートしてるんだ。両思いなのよ、私たち。」

僕はトウコの言葉にびっくりした。
タスケのことは絶対僕の方が先に好きになったのに。
絶対僕の方が先にタスケにキスされたのに。

勝手にデートしてるなんて‥‥



僕もタスケとデートしたい。
トウコなんかに負けたくない。男同士なんだから絶対に僕との方がタスケも楽しいはずだ。


そのとき、角を曲がるタスケが見えた。

見間違えるはずがない。あのサラサラの金髪はタスケだ!
「タ‥‥、」
「あ!!タスケだ!タスケーー!!」
僕の言葉を遮り、トウコがでかい声で叫ぶ。
そうして赤いランドセルをガチャガチャいわせながらタスケに駆け寄っていった。

「おばさん、お散歩ですか?お家までタスケのリード持ちます!」
「あら。トウコちゃんありがとう。」
「タスケ、今日はちょっとだけのデートだね。また川原とか行こうね。」
トウコがタスケの頭を撫でると、よく響く声でタスケは『ウォン!』と鳴いた。



「ちょっと待って!僕も持つー!!」
僕はそう叫んで、黒いランドセルをガチャガチャいわせながらタスケのもとへ走った。

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