Short Novels
Visit of love-prologue-(東方project)
※この作品は東方初心者の作者が書いた物です。
原作と矛盾が多くあるかも知れませんが、そこに目を瞑って読んで頂けるならこのままお読みください。
なお、小説中で使われる画像の著作権は制作者様に存しています。
――その出会いは突然だった。
夏にしては奇妙なまでに肌寒かった夜、俺はずっと眠れずにいた。
何故、と訊かれても未だにその理由は分からない。
だが――俺は予感していたのかもしれない。
この出会いを。
-Visit of love-
〜自室〜
「・・・・・寒い」
あまりの寒さに俺はかれこれ数時間眠れずにいた。
風邪かと思って熱を測ってみたものの平熱。
それじゃあ部屋のどこからかすきま風でも入ってきているのだろうか?
家賃が安いからと理由だけで選んだ築35年のボロアパートだからその可能性も無くはないが、それでも寒すぎないだろうか?
もう夏では使わないだろうと思っていた半纏を出して包まっているが、それでも寒さは半減されない。
――夏だというのにこの寒さは異常だ。
ただその寒さもただ寒いだけじゃなくて、所謂――何かが起こる前兆とでも言おうか。
「何だってんだ今日は・・・・」
はぁ、と小さく溜息を吐いて布団から出る。
こっちに来た時に友人から譲り受けた冷蔵庫を開けてみる――が、中身は空っぽだ。
もう一度、小さく溜息を吐いて冷蔵庫を閉める。
「コンビニでも行くか」
このままでは明日の朝飯すらない。
明日は大学の方で特別講義があるらしいから、朝飯を抜くと絶対に死ねる。
そう思った俺は靴に履き替えて外に出た。
「・・・・?暑い?」
外に出てみると夏の夜特有の蒸し暑さが一気に襲いかかってきた。
一応、半纏を置いてきてよかった。
しかし――先程までの寒さはどこにいったのだろうか?
「ホント、今日は何なんだか・・・」
俺がそう呟くと一際強い風が吹いた。
ここまで風が強いと、飛んでる鳥とか落ちてきそうだよな。
なんて事を思っていると、
「ひゃあああああ〜〜〜!?」
「・・・・・ん?」
どこからか声が聞こえてきた。
だが、キョロキョロと辺りを見回しても人の気配は無い。
・・・・空耳だろうか?
「お、落ちる〜!?」
どうやら空耳ではないらしい。
落ちる、とか叫んでるから・・・・出所は上だったりするのだろうか?
「ど、どいてどいてそこの人〜!!」
まさか、と思いつつ上へと視線を移してみる。
――見た事のない少女が、俺目掛けて落下してきていた。
ってええええええ!?
「ど、どいて下さい〜!!」
「咄嗟に言われてどける人間がいるかあああぁぁっ!!」
俺は半ば逆ギレ気味にそう叫びつつ、凄まじい勢いで落下してきた少女を受け止めた。
・・・・と言うより、衝突した。
この少女は一体どこから落ちてきたのか分からないが、勢いの割には軽くて何とか大事に至る事はなかったが、それでも俺にとっちゃ大ダメージだ。
よく生きてるよなぁ・・・・・俺。
「す、すみません!大丈夫ですか!?」
俺の上にぺたりと座り込んだ少女が、俺の胸に手を置いて心配そうに俺の顔を覗き込む。
これで大丈夫だと思うんなら、目の前の少女は病院に行った方がいいと思う。
というより、俺を病院に連れてって。
「い、いや、俺なら何とか・・・・お前の方は大丈夫か?」
「は、はい!おかげさまで」
少女が『あははー』と笑みを零す。
うむ、見た限りは本当に大丈夫そうだ。
「そっか。なら、そろそろそこを退いてもらっても良いか?」
「わわっ!すみません!」
少女が慌てて俺の上から飛び退く。
それを確認した後、身体に走る痛みに耐えつつゆっくりと立ち上がった。
そんでもって、その少女を改めて眺めてみた。
見た目で言えば大体中〜高校生くらいで、服装は白のYシャツに黒のリボンに黒のベルト。
そして、頭には小さな赤色の烏帽子のようなものが乗っかっている。
靴はというと下駄のように一本だけ妙に長い歯を持った赤色の靴。
正直歩きづらいんじゃないかと思う。
そして――
「?」
こう言うのもなんだが、少女は俺が今までに見た事がない位可愛らしい。
同じ世界の『人間』とは思えない。
「私に顔に何か付いてます?」
「あーいや。そう言う訳じゃないんだが」
「?じゃあ何で私の顔をじぃっと見てるんですか?」
「それはその・・・だな」
少女が不思議そうに首を傾げながらそう尋ねる。
思わず俺は言葉に詰まってしまった。
さて、どうしたものかと思っていると、ふと一つの事が脳裏を掠めた。
「何で空から落ちてきたのか、気になってな。訊いていい物か迷ってたんだ」
と、俺が思いついた事を尋ねてみる。
すると、少女は『其の事ですか』と恥ずかしそうに頬を赤らめた。
「私、面白いネタがあると周りが見えなくなっちゃいまして。それでスピードを出し過ぎてしまいまして・・・・前方不注意でした」
「――待ってくれ。その話によると、お前が凄い速度で空を飛んでいたという事になるんだが?」
「はい、そうですよ。だって私――」
少女が微笑みながら両手をゆっくりと開く。
同時に――少女の背後から黒い大きな翼が現れた。
「鴉天狗ですから――」
少女が翼を一度動かすと、突風に似た風が起こり――黒い羽根が舞い踊るかのように空へと上っていく。
思わずそれに見惚れてしまった。
「お前は・・・・一体・・・?」
俺は目の前の出来事に言葉を失ってしまうが、何とか声を絞り出す。
すると少女は懐からカメラを取り出し、
「私は射命丸文。幻想郷の伝説の幻想ブン屋とは私の事です」
少女はもう一度微笑んで――そのシャッターを押した。
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