Novel
一筋の光 [形藤]
僕らはお互い、太陽と月のようで―・・・。
ジリジリと照りつける真昼の太陽が、とてもとても眩しくて思わず目を細めるんだ。
「夏が・・・来るんだな」
花形が右手をかざして空を見上げる。
俺はその隣で同じ様に空を見上げる振りをしながら、いつもと変わらない角度で花形を見ていた。
「あぁ・・・」
呟き、吐き出した小さな息は途端に消えてしまった。
無言のままの数秒間。
熱気を含んだ一陣の風が俺たちの間を吹き抜けて、地面の砂をまるで波みたいにさらさらと流していた。
あんなに眩しいと感じた日差しは、今は花形に遮られ俺には届かない。
空を見ていた花形は、ゆっくりとこっちを向いた。
逆光で読み取れなかったけど、いつもと変わらないあの表情をしているのだろうと、俺は思った。
「・・・藤真」
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