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Novel
スタートが始まる前に(2)
木暮だって、自分の所為で沢山痛い思いをした筈なのに・・・そんな思いに駆られ、三井は体育館を出て以来、やっとまともに口を開いた。
「・・・木暮」
夕暮れのオレンジ色を一身に受けて、伏せられた長い睫毛が照らされている。
愛しい人の、こんな姿を再び目にすることが出来る日がくるなんて、これは実は夢ではないのか・・・そんな錯覚をも覚える。
「木暮・・・木暮・・・」
言葉に出来ない想いは、どうすれば伝わるのだろう。
突然の三井の行動に、木暮は少し動揺したが何も言わずにただ、三井に抱き締められることにした。
「三井・・・」
木暮の肩に預けられた三井の頬を伝って、熱い何かが木暮の着替えたばかりの制服のカッターシャツを濡らした。
「三井、おかえり。」
しがみついて離れようとしない三井を、木暮は少しだけ残念そうに元の位置に押し戻し、三井だけを真っ直ぐに見つめながら、言った。
三井は、その瞳に目一杯涙を溜めて頷いた。
「・・・三井?」
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あきゅろす。
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