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ナマエ(2)
「・・・大丈夫」
「何が大丈夫なんだ?木暮」
「え、おっ・・・」
突然に声を掛けられ、木暮は自分がまだ赤木と一緒に当番でボール磨きをしていたことに気が付いた。
「ごめん、おれ、独り言・・・」
変に動揺してしまい、木暮は切れ切れに単語を発した。
そんな木暮を、優しい眼差しで見つめている様な口調で、赤木は言う。
「・・・あまり無理はするなよ、公延」
不意に呼ばれた自分の名前に、あの遠い日の約束を思い出す。熱い何かが込み上げてきて、木暮は涙を流していた。
「・・・ん・・・くっ・・・」
背中合わせでボールを磨いていたチームメイトの異変を、いち早く察知した赤木はすぐさま振り返り、何も言わずに木暮を抱き締めた。
「・・・っ・・あ、赤木ぃ・・・」
「公延、約束だ」
咽び泣く木暮を、なだめすかすように赤木が言った。
「剛憲・・・おれ淋しいよ・・・」
ならば、俺が側にいるよ。
せめて、お前の涙が止まるまでは。
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