他1 ページ:5 「じゃあ、それで報告書のことはチャラで…」 「無理です。」 「…駄目か……」 「分かってたなら聞かないで下さい。」 「それじゃ、どうすりゃいい?」 困った顔で私を見る隊長。 私が欲しいのは、綺麗な貝殻のネックレスでも、ましてや宝石や金銀ではないんです。 そんなことも気づかないなんて。 「……ばか。」 「あ?何か言ったか?」 「いえ。それより隊長、報告書の報酬というか、お願いがあります。」 「お願い?珍しいな。四ツ葉がおれに頼み事なんて。」 「いいじゃないですか。」 「悪いとは言わねェよ。何だ?」 頬杖をついてニッと笑って私を見る。 「これからは私も隊長の視察に付いて行きます。」 「…………はあっ!?」 頬杖がずるりと倒れ、頭が落ちかけながらも驚きの声を上げた。 「いいでしょう?」 「良くねェッ!」 「あなたの話だけじゃ、報告書が書けませんから。」 うっ…と隊長は押し黙った。もう一押し。 「私も行って、同じ物を見て。報告書はこれからも私が担当しますから。ね?」 「………………」 隊長は渋い顔で頬をかき、小さな声で言う。 「危険だぞ?」 「はい。」 「死ぬかもしれねェのに?」 「死にません。だってあなたが守ってくれるんでしょう?」 「ぐ……、ったく…」 勝った。思わず笑みがこぼれる。 「これから宜しくお願いします。隊長」 「……ああ。親父には話を通しておくよ。」 「はい。」 「んじゃ、その報告書宜しく頼んだぜ。」 「任せて下さい」 隊長が部屋を出たあと、クスクス笑ってしまった。 私が欲しかったのは隊長との時間なんですよ。 [*前へ] [戻る] |